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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-22

 「どしたの?」
 「何が?」
 「化粧してるじゃないか」
 「だから?」
 「いつもしたこと無いだろ」
 「いつもしてるよ」
 「してない」
 「外に行く時はいつもしてるんだよ」
 「・・・」
 「良介と外で会うことなんか無いから知らなかったんでしょ」
 「そうか」
 「泳いでたの?」
 「うん」
 「座りなさい」
 「これが大和田さんって言うんだ」
 「もうさっきから話してるよ」
 「だから紹介してやった」
 「田宮さんは?」
 「泳いでたら田宮がプールに来た」
 「一緒に来なかったの?」
 「あいつどっかの学校から友達が呼んでないのに来たから案内してるって」
 「可愛い子だからね。ちょっと良介探しておいで」
 「探してって、どうやって?」
 「足と目を使って」
 「うん分かった」

 「あら、小山君」
 「木原さんか。何?」
 「あの人小山君のお姉さんでしょ。紹介して」
 「忙しい」
 「ねぇ、何処行くの?」
 「それが分からないから困ってる」
 「え?」

 「裕子、その人どなた?」
 「あ、木原さん。良かったら座って。小山君のお姉さんなのよ」
 「そうだと思った。初めまして、木原涼子です」
 「初めまして室野芳恵です」
 「木原さんなら知っているわ」
 「え?」
 「粕谷君と今晩デートするんでしょ?」
 「え、小山君そんなことまで言うんですか」
 「小山君ってマザコンじゃなくてアネコンなんだ」
 「アネコンって何?」
 「シスター・コンプレックスのことです」
 「そうかな、そうでも無いと思うけど」
 「何処へ行ったんですか、小山君。変なこと言って行っちゃったけど」
 「変なこと?」
 「何処へ行くのって聞いたらそれが分からないから困ってるって」
 「田宮さん探しに行ったのよ」
 「順子なら今美術室にいたよ、ぞろぞろ男ども連れて」
 「しまった。口を使えって言うの忘れた」
 「え?」
 「田宮さん探して来なさいとお姉さんが言ったら小山君が『どうやって?』って聞いたの。それでお姉さんが『足と目を使って』と言ったのよ」
 「あ、なるほど。小山君と話す時はそういう感じで喋るんだ」
 「あの子ちょっとトロイからね」
 「でも素直で可愛いですよ」
 「だから芳恵がいつもからかうんだよね」
 「からかうつもりは無いんだけど、そうなっちゃうんだな自然に」
 「あの子は冗談が通じないから」
 「でも粕谷君の言うこと本当だったね」
 「うん、本当なんてもんじゃない」
 「何が?」
 「あ、いえ。お姉さんのことです」
 「私の何?」
 「凄い美人だって」
 「ああ」
 「こんなお姉さんがいるから涼子にも順子にも関心が無いんだわ」


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