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良助
【青春 恋愛小説】

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1 裕子-21

 文化祭の当日、良介の教室は半分に仕切られ、半分が展示室に、残り半分が生徒の控え室になっている。展示室には各種図版や写真、和服などが展示され、1時半からは全員で校舎内をそれぞれの扮装を身につけて行列行進した。良介の服は無事間に合って誰からもブルマを借りること無く済んだ。行進から戻ると各自余所のクラスを見に行ったり他のクラスや別の学校の友達と合流したりして散らばり、良介は1人でプールに行って泳いだ。去年までは文化祭の日に各クラブもそれぞれ試合や催しをしたのだが、文化祭はクラス単位でやろうということになり、今年はどのクラブも活動していない。1人で泳いでいたら、ターンしようとした頭を誰かがチョンと叩いた。見ると田宮順子だった。

 「何?」
 「裕子が探していたよ」
 「何で?」
 「さあ、知らない」
 「田宮さん、お母さんの具合どうなの?」
 「うん大して変わりない」
 「ただの風邪?」
 「うん、うちの母さん体が弱いから」
 「僕の母さんなんか風邪ひとつ惹かないな」
 「お父さんがいないから気が張ってるんでしょ」
 「そうか」
 「お母さんは来るの?」
 「聞いてない」
 「誰も来ないの?」
 「姉さんが来る。田宮さん紹介してくれって言ってた」
 「私?」
 「うん」
 「それじゃ来たら知らせて。私、呼んでないのに友達が来たから案内しないといけないの」
 「勝手に見ろって言えばいいじゃないか」
 「そうもいかないわ」
 「結構優しいとこあるんだな」
 「あら、知らなかったの?」
 「知らなかった」
 「そう言えば文化祭が近づくまであまり話したこと無かったね」
 「うん」
 「小山君がいつも避けてるからよ」
 「避けてない」
 「本当?」
 「あっ、もうちょっとそっちへ行け」
 「え?」
 「もうちょっと下がれ」
 「どうしたの? 何?」
 「そこにいると下着が見える」
 「あっ、そうか」
 「さっきからあそこで男が手を振ってるけど、あれは田宮さんの友達なんじゃないのか?」
 「あ、こんなとこまで来た。それじゃ私行くわね」
 「うん」
 「教室に戻った方がいいよ。裕子そこにいると思うから」
 「うん」

 「誰か大和田さん知らない?」
 「知ってるよ」
 「何処?」
 「何が?」
 「だから大和田さん何処にいる?」
 「さあ、大和田さんのことは良く知ってるけど今何処にいるかは知らない」
 「そうか。困ったな。誰か知ってる奴いないかな」
 「さっき食堂にいたわよ。凄い女の人と一緒に」
 「凄い?」

 食堂に行ってみると裕子と良介の姉さんが座って話していた。姉さんは全身ひとつながりの黒い皮のライダースーツを着ていた。普通のライダースーツよりずっと細身で女らしい体の線が全部出ていた。普段は束ねている長い髪を下ろして綺麗に化粧までしている。


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