の-4
だから―――
バレンタインが近づいて来て
2人で海に行きたいと由布子さんが言いだしたときも
さほど疑問は抱かなかった。
「この寒いのに?」
そう言った俺の声に優しく笑って
「一緒に行きたいの」
小さい声でそう言った。
俺はきっと、イヤ確実に浮かれていたんだと思う。
何年も恋い焦がれてきた女性と付き合いだして
何もかもが上手く行っているんだと思い込んでいた。
例え薄氷の上を歩いているような幸せだったとしても
それでも俺は幸せだった。
例え
それが俺の思い込みだったとしても。
酔いは醒める。
確実に。
俺はそのことに気が付きもしなかった―――
それは突然。でも確実に酔いは醒めた。