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蛍の想ひ人
【女性向け 官能小説】

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-5


2月の寒い日曜日
由布子さんが行きたいと言っていた海に2人で来た。

冬の海は沖の方に少しのサーファーがいるだけで
夏の海のイメージとはまるで違う。

由布子さんは誰もいない場所で、大きな流木に座り
俺もそこの横に座り込んだ。

「何も変わっていないような気がするわ」

小さく小さくつぶやいたその目は
まっすぐに海に向かっていて

何も言わずにじっと長い間海を見つめていた。

いつから?
いつと比べて変わってないんだ?
誰と?
誰と来た時と比べて変わってないんだ?
その言葉は怖くて聞けない・・・

由布子さんは、ゆっくりと目をつぶったかと思うと
大きく息を吐き出して
バッグの中をゴソゴソあさる。

少し恥ずかしそうに笑いながら差し出されたそれは
包みを開けると手作りのチョコレートで
「信之に」
由布子さんははっきりとそう言った。

「あ、ぁ。バレンタインか・・・」

俺はもらえるとは思っていなかったそれに嬉しくなって
「ありがとう。本当に嬉しいよ」
と頬にキスをする。

由布子さんからは中学校時代から義理チョコを毎年もらっていた。
兄貴のついでに、俺にもくれていた。

『俺のために』作ってくれた最初のチョコはそれは美味しくて。

「うん。美味い」
俺は大満足だった。



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