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自分のことをズボラな性格をしていると思っていたが、なかなかどうして、俺もやるじゃないか。
狭いながらも綺麗になった部屋を見て、俺は得意げに大きく息を吐いた。
莉奈が風呂に入っている間、俺はこのゴミ屋敷のような部屋を一人で片付けていたのである。
溢れ返るモノの嵐に、どこから手をつけていいのかわからなかったけれど、ゴミをまとめ、洗濯物をたたむだけで随分見違えたようになった。
流石に深夜だから掃除機はかけられないので、雑巾掛けだけにとどめておいたけれど。
廊下には、まとめられたゴミ袋が7つにも増えたけど、あとでゴミ出しさえすればこの家は綺麗になったと断言できる。
狭くて古いマンションだけど、片付けるだけでこんなにも気持ちよくなれるなんて、やっぱり掃除は大事だな。
「仕事終わったら、俺も自分の部屋掃除しとこ」
そうひとりごちたところで、リビングのドアがガチャリと開いた音がした。
「わあ……」
足を踏み入れた瞬間、風呂上がりの莉奈の瞳が大きく開いた。
その驚き具合に、内心俺は有頂天。
「どうです?」
「すごい、綺麗になってる……」
キョロキョロ見渡す莉奈の瞳は、とても嬉しそうな顔をしていた。
あ、コイツ笑うと結構カワイイかも。
「それにこれ……」
彼女の視線の先にあるのは、部屋の真ん中にあったローテーブル。
カップラーメンの空き容器や、灰皿、スナック菓子の空き袋の代わりに小さなホールケーキと小さなシャンパンが置いてあった。
「今日はクリスマスなんだしね」
へへっと鼻の下を擦って頭を掻く。
ケーキもシャンパンも、社長から社員にお疲れの意味で配られるプレゼントだ。
もらいもんだけど、これで少しでも莉奈が笑ってくれたら、そう思って用意しておいた。
すると莉奈は、立ち尽くしたままハラハラとまた涙をこぼし始めた。