忘我5-1
これほど、うわずる岩井に記憶にない。ここまで強く抱きしめることも珍しい。
唇を吸ってはいけないと、決めたかのように、岩井の唇が通り過ぎていく。興奮した様子で肌を唾液で濡らし、膣内を掻き乱す行為は、苛烈であった。両足にあるパンティが邪魔をしているけれど、岩井の指を迎え入れるため、引きちぎらんばかりに脚を開く。
「やはり、服を着せると、なおいい」
他の指がアヌスを撫でてはスッと通り過ぎていく。焦らしているわけではない。自然と触れる。
抱く前に服を着せるのに、汗で湿った肌にひっかかり、時間がかかった。こんなときはイライラして乱暴に扱うのだが……。強烈な昂ぶりを感じるが、表情は柔和だった。
「これほど、欲情するとは」
股間を責める太い腕を両手で抱いて、奈津子は荒い呼吸を繰り返す。岩井の興奮が快感を増長させる。
「アアッ、指が、すごいッ……先生ッ、わたし……」
「うむ、いつもより熱い」
指が身体の中で、ぐるり、ぐるりと回転する。背を丸め、服の上から乳房が吸われる。
「いいッ……」
胸を突き出すように首を反らせ、岩井の頭部を両手で抱く。
「狂っているのは、ワシか」
思考はほとんど停止している。岩井がいった意味が分からない。無理な体勢で手を伸ばし、腰の下にあるペニスに触れた。さっきよりも一回り大きくなっている気がする。
こすり始めると、岩井が呻いた。ペニスは火で炙ったように熱い。
「よりによって、奈津子とは」
意味が分からない。しかし、そんな疑問はたちまち脳裏から霧消した。
うなるように息を吐き、股間から指が引き抜かれた。満たされていないが、次の愛撫がある。期待で胸が苦しい。岩井は指先のにおいを嗅いで、ベロリとなめた。
「そうか、同じだったのか」
放心したような岩井の表情。体がカッと熱くなるのを感じた。その意味は奈津子には分かった。
――また、あの女。
精液の中に奈津子のにおいを嗅ぎ取ったのだ。それがあの女のにおいと似ている、と岩井はいっているのだ。
愛液にはあまりにおいがないと思っていたが、そうではないことを知った。始まりと途中、そして最後、それぞれのにおいが異なることを岩井に教えられた。
あの日は、口の中を陵辱することから始まった。歯や歯茎、舌や唾液の色やにおいを、念入りに調べられた。スカートの上から、二穴をまさぐりながら、感想を奈津子に伝えた。アヌスをまさぐられ、たちまち快楽の坩堝に封じ込められた。岩井との初めてのディープキスで、唾液を滴らせながら、太い舌を夢中で吸い続けたのである。
口責めとアヌス責めの、破壊的な快感を、この身体が忘れられない。アヌスの愛撫で、膣がぬかるみ状態になることなど、岩井は分かっていたのだ。
背後から抱っこされると、股間の間からペニスがそそり立った。思わず太ももで挟み込んだ。
おっきい……。口から漏れそうになる。
ワンピースのスカート部を股間にフワリとかぶせた。ワンピースがテントのように隆起する。岩井はスカートの上から、精液をぬぐうようにしごいた。
岩井は義雄を意識しているわけではない。もはや、義雄などいないものとして、行動しているフシがある。岩井の手が腰から胸へとせり上がる。ブラジャーをしていないので、うっすらと透けている。そのまま、服の上から乳房をつかまれた。
快感で仰け反ったとき、義雄の姿が視界に入った。
正面のソファーにもたれかかり、ガクリと首を垂らし、うつむいていた。岩井の一撃以上に、奈津子の嬌声に打ちのめされているのだ。
強烈な自責の念で、胸が張り裂けそうだ。ここまで義雄を苦しめた原因は、本物の男の体を知った奈津子の血だ。太ももに宛がわれた熱い肉塊が、夫を、家族を、凌駕した。愛する娘すら捨て……。
岩井の手が乳房をすくい上げ、円を描くように揉みほぐす。
「ぁん……」
この状態のペニスを鎮めるには奈津子の体が必要だ。それを知っている奈津子の身体が、より疼き、本能のまま、よがり声が出てしまう。上半身を覆い尽くすくらいの岩井の手のひら。胸を揉む手が大きければ大きいほど、より強い快感を得られることを知った。Mの女は強い男に陵辱されて強烈なエクスタシーを感じる。
「んふ……ぅふん……」
唾液で濡れている胸のあたりがもみくちゃになる。岩井の手が、あごをつかむ。
奈津子は首をよじって潤んだ瞳を見せた。
「奈津子……」
かすれたような岩井の声。