電気屋-1
夜の6時に少し前、早めにシャッターを下ろした。
どうせ開けていたってこれから客なんて来ないだろう。
まして今日みたいな祭りの夜に、わざわざ蛍光灯や電池なんて買いに来ることもないだろ。
もう少しすると花火が上がる。
そうしたら二階の窓からならよく見える。
そこで早い晩御飯を食いながらその時間を過ごす。
俺が生まれる前から我が家では祭りの夜はずっとそうしてきた。
50年以上前、親父の親父がこの商店街にちっぽけな電気屋を開業した。
それ以来、親父も、そして俺もガキの頃からずっと祭りの花火を二階で見てきた。
地元すぎるから今はもう祭りだからって会場の神社まで歩いていくような事はない。
寂れたこの町もこの日ばかりは珍しく観光客が溢れて、チンピラもヤクザもヤンキーもやたら出歩くから、ウチみたいなド地元はかえって避けるくらいだ。
それでも地元の商工会議所は地域振興を謳ってるからウチにまで祭りの寄付金を募ってくる。
馬鹿馬鹿しいかもしれないけれど、それが現実で事実だ。
くそったれめ。
こんな寂れた商店街にも夢があった。
大昔はバスの増便のために乗り合い所を新たに作ろうかとか、高速が近くを通るとか夢みたいな話があったらしい。
昭和50年代頃の話だ。
そんな明るい未来なんて結局来なかった事は平成生まれの俺はよく分かってる。
くそったれめ。
電気屋は創業50年を何とか超えられたけど、それで終わりだ。
親父が急逝し、この店を続けようという意思は俺にはもうなかった。
この店はもうすぐ閉店する。
そしたら隣接する市にある電気部品の工場に俺も働きに出る事になる。
くそったれめ。
イライラする気持ちを抑えて、吸い殻を灰皿に押し付ける。
二階の窓から見下ろす通りを行き来する人の姿が増えてきた。
花火の時間をピークにどんどん増えてくるだろう。
「人増えて来たねぇ」
そう言って母親がスイカの載ったお盆をもって上がってきた。
「まあ、天気もいいしな」
そう言って俺はお盆を受け取って、小さなテーブルに乗せた。
傍らに腰かけた母も少し身を乗り出して窓の下を見下ろし、祭りの喧騒と湿気っぽい夏の夜の空気を部屋に入れる。
子供の甲高い声に屋台の呼び込み、誰かが駆けていく足音。
普段はろくに聞こえない音ばかりがこの日だけはシャッター商店街にも満ちる。
祭りがあってこれだけ人が通ったって誰もその道すがらにある商店街の店なんかろくに見やしない。
それも俺は子供のころから知っている。
くそったれめ。
カラカラカラと窓のサッシを滑る音を立てて、ゆっくりと窓を閉めた。
パンと音を立てて完全に閉じられると、急に部屋はシンと静かになる。
ベルトを緩めると、キツかった腹の肉が少し楽になった。
ズボンのホックを外して膝下まで脱いでしまうと、下半身だけ下着姿になった。
少しためらう様にゆっくりと母の手が下着越しに触れてくる。
すっかり堅くなった俺のそこはもどかしい刺激で余計に硬度を増すようだった。
目の前の母の頭がゆっくりと下がっていく。
下を向いていてよく見えないが、温かく柔らかい唇の感触がモノを包むように触れてきた。
濡れた感触が下着に伝わってきてちょっと気持ち悪い。
母の唇が蠢くたびに唾液を染み込ませているのか、下着の濡れている個所が広がってくるため、ちょっと嫌で俺はもう一度腰を上げて下着も下げた。
露わになった俺のモノを見いるようにして母は掌で握りしめてくる。
そして今度は赤い舌を覗かせながらもう一度触れてきた。
思わず小さく息が漏れたのでもう一度だけ窓の外を見たが、行きかう人々は誰も二階の窓何て見上げようともしてなかった。
薄く白いブラウスを着ていた母の上半身は既に汗ばんで、ブラの線が透けて見えていた。
丸みの帯びた肩がまるでいつか見たロボットアニメのキャラみたいにも思えた。
けれど、その前の胸の膨らみはもっとはっきりと丸みを帯びていて、シャツが隆起している。
腕を伸ばしてその膨らみに手を当てると、母は上目遣いで俺を見てきた。
目尻の皺と口元のほうれい線がちょっと目立ってきたが、頬を赤らめた表情は艶やかな色気があった。
といってもいやらしさよりはむしろ母が生来持ち合わせてる清潔感漂う印象を受ける。