囚〜嵐の夜の狼〜-1
その日は、たまたま両親が不在だった。理由は、同窓会。私の両親は同じ高校、同じクラスだったようで、当然同じ同窓会に呼ばれて行った。18歳の嫁入り前の娘を置いて…。
―ガタッ
「ひッ!!何だ…風か。」いつも暮らしている家だけれど、1人でいると何だか心細くて物音がしただけでもビクビクしてしまう。
「…怖いよ〜〜」
テレビを見ていても、マンガを読んでいても、1人だという事実が頭から離れない。
あいにく、彼氏である健治はバイト。実はもう終わっている時間なのだが、何故か帰ってこない。
「私今日1人だって言ったのに〜…」
せっかく久しぶりにイチャイチャ出来ると思ったのに…。そう思ってもいないものはいないのだから仕方がない。
「…。」
多分彼はバイト先の先輩に誘われたか何かで、すぐに帰ってこれないのだろう。彼はそういう人だから。
「まぁ…そこも好きなんだけどね。」
早紀は苦笑したが、どうも笑っていられる程の余裕は持ち合わせていないらしい。
静かにしていればしている程、家の中の何て事ない音にも敏感に反応してしまう。
「どうする、早紀!!」
早紀の、1人の恐怖対処法は…
1、寝る
2、音楽をきく
3、本を読む
ちなみに、音楽も本も効果なし。残るは勿論…
「寝る…しかないか」
早紀は取りあえず、ベッドに横になってみた。
「…寝れるかな…」
早紀の心配もなんのその、ベッドに横になるとどっと疲れがでて容易に眠りに落ちる事ができた。
―…
それからどれくらいの時間が経っただろうか。
ピ-ンポ-ンピ-ンポ-ン
「…ん?」
何やら玄関が煩い。
「な…に…?」
早紀は眠い目をこすりながら玄関に向かった。
「は-い?」
「俺。」
「…健治!!」
ドアを開けるとそこには願ってもいない人がいた。
「健治〜…」
早紀は思いっきり健治に抱き付く。
「…ッ」
「…健治?」
健治は何の反応もない。
「どうし…」
「お前俺を挑発してんのか?」
早紀は健治に顎をクイッと持ち上げられた。
「…は?」
早紀はイマイチ状況が飲み込めない。
「え〜と…つまり、あたしが健治を誘惑したと?」
「それ以外に何があるんだよ…?」
「いや、挑発も誘惑もしてないし!!」
「その目が俺を誘ってる…」
「は!?」
(助けて、ママ!!パパ!!おじさん!!おばさん!!健治…キャラ違うよ!!ちょっと俺様キャラだよ!!)
早紀の心の叫びも虚しく、健治は『ちッ』と舌うちをした。
「口の減らねぇ女だな…」
「何言って…んんッッ」
急に健治の顔が近づいてきて、いとも簡単に早紀の唇を奪う。
ソフトキスからどんどん過激なものになっていって、早紀はもう息が出来ない。
「ッッはぁッ…はぁ…」
あまりの苦しさに目に涙が浮かぶ。
「ふ〜ん…しおらしい顔も出来るのな。」
「なッ…馬鹿ぁ!!」
早紀が健治に殴りかかろうと拳をあげるが、健治の大きな手に阻まれてしまった。