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イノセント・ラブドール
【SM 官能小説】

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イノセント・ラブドール-3

じっと目を閉じると絶えまない蜜蜂の羽の音が聞こえ、夏空から吹いてくる風を感じる。
その音と風は、瞳の中で空から降りそそぐ光となり、ラブドールの瑞々しい肌と薄桃色の乳首
と、下腹部の淡く映えた産毛を優しく擽りあげる。


その憧憬はとても美しいのに、ぼくは胸が締めつけられるような嫉妬をいだき、その光を残酷
にさえ感じた。その光がぼくのラブドールを盗んでいくような気がしたのだ。

ぼくは絶え間なく降り注ぐ光と蜜蜂の音に向かってナイフを突きつけた。いや、ぼくがナイフ
を突きつけたのは青く澄んだ夏空だった。ナイフを含んだ青空はいつのまにか厚い雲に覆われ、
切り裂かれた空は色彩を失っていく。淡くゆるんだ光の中にぼくのラブドールが薄い肉の被膜
となって溶けていく。

ぼくは長い息を吸い込んだ。そのとき言葉にならない眩しい詩がぼくの心に生まれてくるよう
な気がした。たっぷりと過ぎていくぼくだけの残酷で美しい時間は、ぼくを甘酸っぱい感傷で
充たしてくれる。甘酸っぱさは、ぼくが初めてラブドールのオナホールに射精した、ぼく自身
の精液の匂いに似ていた。


感傷は風景でもなく、記憶でも、言葉でも、ましてやひとりよがりの感情でもなかった。ぼく
の感傷はただ青かっただけだ。それなのにいつのまにかその青さは漆黒に塗り込められ、やが
て海の底に潜む深海魚のような塊となって蠢き、ぬめった鱗の表面に夥しい棘と化した夜光虫
が毒々しい極彩色を放つような暗鬱とした感情へと変幻していった。

その感情はあきらかにそのラブドールが《ぼくのものになっていない》という憎しみに充ちた
焦燥だった。


突然、蜜蜂が目の前で静止した。蜜蜂はぼくを嘲笑うようにラブドールの薄絹のように靡いた
繊毛の中で羽を震わせた。そのとき、ぼくは手にした鋭く尖ったナイフの先端で蜜蜂の背中を
刺した。

一瞬の出来事だった。蜜蜂に刺さったと思ったけど、目の前に露わになったのは、蜜蜂がとま
っていたラブドールの白い太腿のつけ根のオナホールが無残に裂かれ、とろりとした琥珀の蜜
が裂かれた割れ目から滲み出る様子だった。糸を引くようにしたたる蜜は、夏の眩しい光の中
に音もなく吸い込まれていった。

その瞬間ぼくは夢から目を覚まし、下半身の下着の中に湿り気を感じた。それはとろりとした
生あたたかい白濁液…。夢精だった…。



一か月前、突然、降ってきた雨はぼくに幸運をもたらした。

川辺の鬱蒼と茂った樹木の陰で雨やどりをしていたぼくのところに走ってきたマイコさんは
白い制服のブラウスをしっとりと濡らしていた。初めて彼女とふたりだけになった、思いもか
けない瞬間だった。

「急に降ってくるんだもの、ひどい雨だわ」
 彼女はぼくの顔を見ることもなく濡れた髪をハンカチでぬぐった。ぼくは彼女の隣にいるこ
とだけで何か恥ずかしさを感じた。

「夏の夕暮れの雨はすぐに止むでしょう…。でも、ぼくはずっとこの薄紫色の雨を見ていたい
な」

その言葉に彼女は不意にぼくの方を振り向き、一瞬何か異質のものを見るように怪訝な顔をし
たが、すぐに美しい柔和な笑みを見せた。


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