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イノセント・ラブドール
【SM 官能小説】

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イノセント・ラブドール-13

私は彼のラブドールとなることで、全身で夏の光を吸いながら彼の感傷という抱擁を受け、き
わめて性的に《彼に還元》された。それは至福に充ちた時間だった。私は自分自身のありのま
まの、色彩のない、無垢な姿を意識することによって自分がどこに向おうとしているのかを
知ることができた。


私は彼のラブドールとなり、彼に服従し、縛られ、犯されるという憧憬をすでにあの頃から
自分の中に秘めていたのかもしれない。そして、ラブドールとなったもうひとりの私を確かに
偏愛していた…きわめて倒錯的な性の対象として。

彼に凌辱され犯される《もうひとりの私》を嘲笑う私はサディストであり、《もうひとりの私》
に対して嫉妬と苦痛の快感で身をよじらせる私はマゾヒストでもあった。


私という存在は彼によってもたらされ、私に吹き込まれる彼の息はかけがえのない快楽で私を
充たした。私はふたたび彼の感傷となることを望んでいる。青い夏空に彼がいだく感傷は、私
をラブドールに封じ込めることができ、私は彼のラブドールとなることで無垢で純粋な、私が
これまで知り得なかった快楽を知ることができたと思っている。



園村リョウ… 彼は一か月前、都心の高級マンションの一室で、遺体で発見された。

多量の睡眠薬を服用した自殺だった。週刊誌は、彼があるベンチャー企業の創始者で、数年に
して巨額の富を得た人物であることを綴っていながらも、彼が奇妙な死に方をしていたことも
短く追記していた。彼は、ナイフでバラバラに裂かれた無残なラブドールの残片といっしょに
ベッドの中で、まるで至福に充たされたように死んでいたという…。


イノセント・ラブドール…それは純粋で無垢な彼の欲望であり、同時に私の欲望そのものだっ
た…。


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