不死蝶・海老川優里-8
翌朝、城南署に通報が入った。河原で男が数人半裸でぐったりしていると言う通報だった。
「どーせ酔いつぶれてるだけだろ。でも通報来ちまったから取り敢えず行かなきゃ煩いからなぁ。」
SNSで怠慢だと書かれたら面倒臭い。すぐに呟かれる時代だ。取り敢えず対応したと言う事実だけでも作っておかないと非難されかねない。
「しょーがねぇ。取り敢えず行くかー。おい沙希、お前暇だよな?ついてこい。」
35歳の高橋和也巡査は少々生意気な24歳の若い女性刑事、南野沙希に声をかけた。高橋も沙希も主に性犯罪の案件を担当している。酔っ払いの保護など担当外だが、あいにく対応できそうな刑事は今は見当たらない。現場は車で行けばさほど遠くはない。さっさと行って済ませようと思った。
「酔っ払い起こすぐらい1人で十分じゃないですかぁ?」
思い切りダルそうに答えた。
「じゃあお前1人で行ってこいよ。」
「嫌ですよ。酔っ払い、苦手〜」
酔っ払いも苦手だが、高橋はもっと苦手であった。何故なら沙希に対してセクハラまがいの発言や言動が多いからだ。いつもいやらしい目で自分を見ているのが分かるし、尻を触られる事は日常茶飯事だ。ただ高橋は自分の教育係りだ。あまり逆らう事は出来なかった。本気かどうかは分からないが、勤務中に同行している時にちょくちょくホテルに誘って来る。沙希の勘だが、高橋はおそらく自分に好意を寄せている。雰囲気でそう思う。沙希は早く高橋から離れたいといつも思っている。
「タラタラしてる暇はねー。行くぞ。」
「はーい。」
仕方なく酔っ払い対応に出かけて行った。車に乗り2人きりになった瞬間からすぐセクハラタイムに突入する。
「どうせ河原で酒飲んで合コン相手かなんかと乱行パーティでもしてたんだろ。いーなー、俺もすぐヤラせてくれる女と合コンしたいわー。」
「だったら女も一緒に酔いつぶれてるはずじゃないですか。」
「分かんねーよ?酔ったふりして財布盗んでトンズラしたかも知んねーし。」
「男もそこまで馬鹿じゃないでしょ?」
「いや〜、俺だって酒飲んでお前とヤッたらガンガン突きすぎて頭回って潰れちゃうかも知んねーし。」
「まずヤラないんでその心配はないですよ?」
「くくく、男と女なんていつどこでどうなるか分かんねーしな。」
そう言っていやらしい目で沙希の体を舐め回すような目つきで見つめた。
(またいやらしい目つきで見てる…。ホント、やんなっちゃう。)
沙希はドアに肘をつき頬杖をついて顔を窓の外に向けた。そんな沙希のスカートから見える太股や胸を少しニヤケ顔で見ている高橋であった。