驚愕すべき正体-2
若菜はある件を中港署に問い合わせた後、華英に指示を出し中は港海岸に向かう。
「何か事件ですか??」
「うん、まぁ…」
歯切れの悪い若菜は何か思いつめている様子であった。険しい顔をしながら窓の外を眺めている。話しかけづらい雰囲気を醸し出していた。華英は指示通りに中港海岸に向かう。
海岸沿いの国道を走っていると、いわゆるネズミとりをしていた交通課の警察官が取り締まりを終え帰る準備をしているのが見えた。
「パトカーの後ろに停めて。」
「あ、はい。」
華英はパトカーの後ろに車を寄せる。するとこちらを見た警察官のうち、女性の警察官が寄ってきた。
「あれ?若菜ちゃん!?」
そう言って再会を喜ぶような表情で手を振る。若菜はドアを開け車を降りた。
「久しぶりです。」
若菜の暗い表情を見たその女性警察官から再会を喜ぶ顔が少しずつ消えて行く。
「涼子さん、ちょっと2人きりで話し出来ますか?」
そう、その女性警察官とは現在中港署で交通課に属している瀬川涼子であった。
「うん…」
涼子は何故若菜が訪ねて来たのか察しがついている様子であった。2人は目と鼻の先の海岸沿いの海が良く見える小さな公園まで歩きベンチに座る?
「涼子さん、今日は…」
若菜がそう口を開くと涼子は言いづらい事を躊躇う若菜に配慮してか、自分から口を開く。
「いつか、こんな形で若菜ちゃんが訪ねて来る日が来るって思ってたわ…。」
穏やかな笑みの中に、涼子の中でしまい込んでいた事を隠す苦しみから解放される安堵感を感じられた。涼子も田口徹事件の事を思い出すのは辛い。湯島武史にレイプされ人生をめちゃくちゃにされた1人だ。田口徹事件の時には殺人までしている。複雑な事件であった為、涼子の殺人については警察内で闇に葬った事実がある。警察に復職し、今ではようやく人並みの生活が送れるようになった。正直な所、過去を掘り返したくないのが素直な気持ちだろう。その苦しみを理解している若菜には、やはり話しづらい内容であった。
「若菜ちゃん、きっとあなたは私にずっと聞きたい事があったはず。なのに私に気を使って聞いて来なかったよね?ごめんね?きっと若菜ちゃんが聞きたい事を正直に話していれば、今回の事件はここまで混乱を極める事はなかったかもしれない。本当にごめんなさい。」
頭を下げる涼子に若菜は諭すように言った。
「謝らないで下さい。涼子さんは私が事件に巻き込んでしまった。悪いのは私なんです。」
「いいえ、あれは私の意思でもあるわ?若菜ちゃんから話を貰わなくても結果は同じだった。そう思うわ?」
「涼子さん…」
諭し、諭され、2人は見つめ合い、事件解決に向けて全てを打ち明ける決意をした涼子であった。