美しい知能犯-4
マギーは食事に関しては拘りはない。決してお洒落なレストランで無ければ嫌だとか、そんな女ではないし、若菜と行動を共にすると大抵オヤジが入りそうな定食屋に入る事が多いが嫌いではなかった。別にコンビニ弁当でも良かったが、このホテルからコンビニが少し離れている事と、夜道を1人で歩くのが好きではない事からホテル内のレストランを選んだ。夜道と言ってもまだ人通りは多いが疲労が溜まり歩くのが嫌だった事が最大の理由であった。
割と庶民的なレストランだ。美形ハーフの容姿から、良く金がかかりそうな女だと言われるが、そんな事はない。ごく普通のこのレストランが妙に落ち着く。
窓際の一番奥に案内され席につくマギー。メニューを見てウェイトレスが水を持って来るまでに注文は決まっていた。
「チーズハンバーグセットをお願いします。」
「畏まりました。」
注文を取りウェイトレスが去って行った。マギーは冷えた水をゴクッと飲む。そしてメニューを眺めた。
(上原さんだったら…、きっとカツ丼ね。)
若菜はいつもカツ丼ばかり食べている。若菜の父を知る人間に聞くと、若菜の父もまたいつもカツ丼を食べていたようだ。若菜もそれを知っているだろう。マギーは若菜がどんな気持ちでカツ丼を食べているのかを考えると胸がホッコリした。
すっかりオフモードに入ったマギーの前に1人の女性が現れた。
「御一緒してもいいですか?」
「は、はい…。」
レストラン内、客は多いが空いているテーブルがない訳ではない。なのにどうして相席なのかと不思議に思ったマギーが顔を上げ女性を見ると、色白で肌が綺麗なモデルのような女性が微笑んでいた。
(わざわざ相席してくるなんて、知り合いかな…)
どこかで会った女性かと思った。しかしこの雰囲気は確実に初対面だ。しかし知らない顔ではないような気もする。しかし誰だか思い出せない。マギーは女性を観察するかのように見つめていると、
「では、失礼します。」
と言って席に座った。マギーは正面からジッと女性の顔を見つめた。するとマギーの顔が少しずつ驚きの表情に変化して行く。女性はそんなマギーを美しい笑みをキープしたまま見つめていた。
「ま、まさか…あなたは…」
マギーの脳はその女性を認識した。間違いなく初対面である。しかし顔は良く知っていた。何故なら目の前にいる女性は白川歩美であったからだ。