〈二人だけの宝物〉-6
(いッ…やだッ!?)
店長がグリップにあるスイッチを入れると、その玩具は唸りをあげて踊り出した。
真珠玉は皮膚の下でグルグルと回り、亀頭は棒をしならせてブンブンと揺れ、毛筆の部分は蚊の羽音のようにプーンと鳴いてワサワサと靡いている。
その様はまるで奇形の巨大イモムシであり、あれがこの店内にある商品という事は、つまりは女体に対して“使う物”に間違いないのだ。
『何処に行くんだッ!!』
「ッ…!!!!」
店長の怒鳴り声に、花恋はハッとした……あの気持ち悪い玩具に恐怖を感じた花恋は、無意識のうちに逃げ出しており、階段付近にまで来てしまっていたのだ……。
『まさか……この状況で『逃げる!』……とはねえ……ちょっとコレは許されませんなあ?』
「ほ…本心じゃないんです……逃げるなんてそんな……」
『言い訳はいいから、もっと傍に来なさい。話が遠くて聞こえませんよ?』
グイン!と頭を振り回す玩具を持つ店長が、眼光鋭く睨みながら手招きしている……更に副店長はバッグからスマホを取り出し、いつでも“保護者”に告げる素振りを見せる……もはや花恋は招かれるがままに、店長の前まで行った……。
『ふ〜ん?ま、一回だけは君の言う事を信じてやろう……ところで、大人の世界の謝罪というのは《土下座》が基本なんだ……その可愛い服が汚れたら可哀想だから、そこのテーブルの上で土下座しなさい』
「………は…はい」
花恋はスニーカーを脱ぎ、そしてテーブルに乗った……。
(どうにかして許して貰わないと……)
“一回は信じる”の言葉を撥ね付けられる状況にはなく、唇をギュッと噛みながら花恋は正座になって両手を着き、頭を下げた。
「ホントにすみませんでした……ご迷惑をお掛けしてすみませんでした…!」
どちらかの溜め息が聞こえた……そして、謝罪への反応は聞こえてこない……花恋がもう一度謝ろうとした時、頭頂部がグリグリと撫でられた……それはあの玩具の先端だった……。