〈二人だけの宝物〉-3
(入りたく…ない……)
戻ろうか……と思っても、もう店内に入ってしまったのだ。
今さら手ぶらで帰ったりしたら、きっとデートどころではなくなってしまうだろう。
花恋は意を決して右側にあるもう一つの扉を開け、店内へと入っていった……。
{なッ中はやめてえッ!ダメッ!ダメえぇぇッ!}
{スゴいぃッ!あッ!あんッ!?もうイッちゃうぅ!}
{もうやだあッ!壊れちゃうッ!壊れちゃうよぉッ!}
店内は悲鳴と喘ぎ声で溢れていた。
たくさんの作品が棚に並べられ、その横には作品のプロモーションビデオが映し出されている。
(うわ…ッ!?わわわッ!?)
20人近い男達に揉みくちゃにされ、レイプされている女性。
縛られた上に鼻フックを引っ掛けられ、美貌を破壊されている黒ギャル。
その何れもが花恋の受けたレイプより酷く、ほとんど犯罪現場の映像といっても良いくらいだ。
花恋は直視に耐えない映像を視界に入れぬよう俯き、足早に店の奥に向かい、そして言われていたコーナーを見つけた。
紺色の暖簾を掻き分けて中に……そこは更に歪んだ空間であった。
{この極太バイブの極悪な亀頭は、きっと貴方の牝奴隷を絶頂に導くでしょう}
{10パターンの振動と10パターンの動き。どんな女性もアナルの虜になりますよ?}
{クリトリス開発の決定版!しっかり吸い上げ強烈振動!失禁女性が続出中!}
映像こそ無かったが、あちこちのスピーカーから放たれる言葉は聞くに耐えないものばかり。
狼狽える花恋は商品棚を見回すも、そのどれもが恐ろしい凶器にしか見えない。
(すッ…好きなのなんて……有るわけないじゃない……)
ケースに収められた色とりどりの“棒っきれ”は、手で触れるのも躊躇われる物ばかり……だが、手に取らない訳にはいかず、花恋はあまり大きくない“無難なサイズ”の緑色の玩具を手にした……。
『ちょっと君?』
「ッ…!!??」
誰も居ないと思っていたコーナーに、店員が一人だけ居た……突然声を掛けられた花恋は驚いて跳びはね、思わず手にした玩具を隠そうと身体を捻った……その弾みで勢い余って、あろうことか棚から商品をバタバタと落としてしまった……。