プレゼント1-1
通っている高校の、
卒業式の3日前。
タクミは夜、駅ビルの2階にある
ジュエリーショップにいた。
テンポの早い洋楽が流れている
駅ビルは、平日にもかかわらず
今日も賑わっている。
2階にはジュエリーショップが
3店舗ほどある。
タクミは制服姿で、
20分ほど店内の商品を眺め
考えながら店を出て
また別の店へと行く。
そこでもしばらく商品を眺めて
また別の店へ行く。
ガラスケースの中に陳列されている
ブレスレットを眺めている。
40代の女の店員は、
何度も店にきては
難しい顔をして商品を眺めている
タクミに、最初は声をかけたが
ゆっくり眺めたいのだろう、と
察し、今は邪魔にならないよう
見守っている。
真剣な顔でガラスケースの中の
商品を眺めていると、
背後から声をかけられた。
「 ぁ。
やっぱり〜
こーんばん わっ!」
「 、ぇ?」
タクミが振り向く。
ダークグリーンのロングコートに
黒いショートブーツ。
ボブヘアーで、
キリッとした顔立ちの女性が
タクミに声をかけた。
タクミが女性の顔を見て呟く。
「知可子さん、、。
こん ばんは 、、、。」
「何ーー?
プレゼント?」
知可子がタクミが見ていた
ガラスケースを覗きこむ。
ガラスケースの中の
ブレスレットやネックレスを
眺めながら知可子は言う。
「 ちづるに?」
「 ぇ? 、、ぁーーー まぁ」
「 ふーーん、、。」
「、 、 、、。」
「 ぁ。 ねぇ、
この色、
ちづる好きそうじゃない?」
「 ぇ? 」
知可子はガラスケースの中の
ピンクゴールドのブレスレットに
指を指しながら言う。
タクミはそれをじっと眺めて言う。
「 、、そー、、っすね。」
「 ぁ。ネックレスだった?」
「ぇ?」
「プレゼント。」
「、 、ぁ。 いや、、。
どっちがいいかなーって、、。」
「 そっか。」
知可子は少し黙って
タクミの様子を伺う。
1人で選びたいように見えて、
その場を立ち去ろうと
タクミに声をかけようとする。
「まぁ、でも。
なんでも喜ぶと思うよ。
ちづるは。 」
「、 、 、、。」
「 、、じゃあ 」
「 、 ぁ。」
「 ん?」
「、、時間、平気なら。
ちょっと聞きたいんですけど。」
「 え?」
「、、どれが、好きそう、とか。」
「、、うん。
時間は平気。
帰るだけだし。」
「そー、、 っすか。」
「 あ! ねぇ、
隣のショップは見た?」
「ぁーー、さっき。
ちょこっと。」
「ちづるね、そこのブランド
結構好きなんだよ? 」
「 え、マジっすか。」
「 そっち見ようよ。」
「、、そーっすね。
じゃあ、、、 」
タクミと知可子は、
そう話しなから隣のブランドの
ショップへ移動した。