〈楯と牙〉-3
『フフフ……「関係ない」か……さすがモテる女は強気なもんだな…？』
ジッと睨んでくる花恋の苦しみを、裕太はほくそ笑みながら受け止め、そしてもう一つの椅子を自分の横に引き寄せると、その座面にノートパソコンを置いた。
それはもっと花恋を痛め付ける、卑劣で非道な“兄貴”の企てだった……。
「………!!??」
ブゥン…とパソコンが唸ると、画面は“いかがわしい言葉”で溢れた。
それは花恋の下着を購入した者からの、歓びのメールの数々だった。
『え〜と、なになに？『シュシュのようにクシャクシャに丸まるパンティはフィット感も素晴らしく、頭に被ってクロッチの臭いを嗅ぎながらＪＫレイプものＡＶを観賞するのは最高です。ブラジャーも微かに汗の臭いが残ってて大満足です』だとよ。“良かった”な、花恋？』
「……!!!」
考えたくもなかった、購入された下着の末路……それは嫌悪しか催せない変質者の秘め事の告白であり、そんな者の性欲の対象にされているという悍ましさに、花恋の身体は震えながら鳥肌を立たせた……。
『こんなのもあるぜ？『痒くてポリポリ掻いてるようにクリちゃんを弄るカレンちゃんのオナニーが可愛いですね♪ベッタリ付いたマン汁の量も多くて、お得感が高くて◎です。あと臭いも魚や蟹が腐ったようなのじゃなくチーズっぽい酸っぱさなのも◎ですね♪また出品されたら購入します！』だとよ……おいおい、大人気じゃないか？』
「ッ………!!!」
こんな賞賛なんか……思わずパソコンを壊してやろうと伸ばした手は素早く払われ、更には肩を足で押されて床に倒される……その暴力的な制圧に、花恋は声を荒らげる事も出来ないでいる……。
『なあ、みんな“カレンちゃん”の染み付きパンティに大喜びしてるんだ……たくさんの〈ありがとうの声〉を貰ってるなんて知らなかったろう？フッフフフ……』
裕太はパソコンを机の上に戻すと、丸い手鏡を花恋の目の前にポンッ…と放った。
『さあ、パンティに恥ずかしい染みを付けようか？ジーンズ脱いでオナニーして見せろ』
「ッ!!??」
なんとも冷たい目が、唇を曲げて憮然としている花恋を見つめている。
しかもその手にはハンディカメラが握られ、被写体を狙うレンズが向けられていた。
『昨日の今日だ。「勉強してるかな？」ってババアが上がってきたらマズいだろ？それに彼氏に電話するんだろ？だったら早く済ませた方が利口ってもんだ……フフ……俺は諦めるつもりは無いからな』
部屋に撒かれているという写真は、花恋から迷う時間を奪うという意味こそが本命だ……それにいま気付かされた花恋は、絵に描いたような悔しさ一杯な“しかめっ面”を作り、腰を浮かせてジーンズを脱ぎ出す……淡い黄色の下着がオレンジのＹシャツの裾から見え、それを隠そうと花恋はシャツを両手で引っ張ると、困り果てたようにペタンと床に座り込んだ……。