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《見えない鎖》
【鬼畜 官能小説】

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〈楯と牙〉-2

『俺が大嫌いなんだろ?大きい声を出したかったら出せよ……騒ぎを聞いたババアは走ってくるだろうなあ?そこでオマエの写真を見て……フフッ…どんな顔するかなあ?フフフッ』

「……ッ!!??」


声を奪う……これが裕太の狙いだった……歯向かえる余地を無くし、この部屋の中に止めておく為に“弱味”をばら撒いたのだ……花恋は膝どころか握られた拳まで震わせて、勝ち誇る裕太を見つめる……。


「ゆ…夕飯食べたらすぐに電話するって……か、彼氏と約束……」

『それって別に時間決めてないじゃないか?ん?8時でも9時でも……なあ?』


スマホ一つで何とかなるという考えは、実に幼稚だったと花恋は思い知らされた。
切羽詰まった最中で巡らせた計画とはいえ、その隙だらけな防御策では裕太を追い払う事は出来ないと突き付けられたのだ。


『勘違いするなよ?俺は別に彼氏を作っても文句は言わないよ。『電話をするな』なんて言うつもりも無いしさ』


裕太は今にも泣き出しそうな花恋を横目に、どっかりと椅子に座って上目遣いで見た。


『まあそこに座れよ……花恋ほどの可愛い女の子なら、彼氏の一人や二人いても可笑しくないって思ってる……〈兄貴〉として応援するつもりだ……何してる?遠慮しないで座れよ早く』

「…………」


裕太は殊勝な台詞を吐きながら両脚をガバッと開き、そこに空いた床を指さして『座れ』と命じる。

本心から言えばこの部屋から逃げ出し、一刻も早くバラ撒かれた写真を処分したかったのだが、声を荒らげられる事だけは避けなければならない花恋は、命令のままに裕太の眼下に正座をした。


『花恋が好きになる男だ……きっと学校一のイケメンで、学校中の女共がキャーキャー言う男なんだろうな?そうだろ?』


確かに裕太の言う通りの男だ。
背が高くて格好良くて、英明に恋い焦がれる女生徒はいくらでもいる。


『彼氏を夢中にさせたいよなあ?『花恋しか要らない』って思わせたいよなあ?』


何もかもその通りだ……花恋には英明しか居ないのだし、勿論、英明にもそう思って貰いたい……英明への強固な想いは例え裕太からの言葉であっても、花恋の口から否定の言葉は発しようが無かった……。


『誰にも邪魔されたくないよな?別れたくないよなあ?』

「……う、煩いわね…ッ!貴方なんかに関係ないじゃない…ッ…そ、それに今度の日曜はデートするんだから邪魔しないで…ッ!」


やや強めな口調は、今、二人の恋路を邪魔しているのは「お前だ!」という怒りを込めてのもの……いや、邪魔などという生易しいものではなく、何もかも壊そうとしているのが「お前なんだ!」という激情に満ちているからだ……唇を噛み締めて顎を引き、文字どおりに上から目線で話してくる裕太を、花恋は涙ながらに睨む……鋭い視線に感情を詰め込み、睨み付ける事だけが今の花恋の精一杯の抵抗だった……。


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