Birthday's CHOCOLATE-2
アタシは頬をつねられたまんま記憶がしばらくブッ飛んでいたらしい。気付くと放課後の誰もいない教室に座っていた。アタシ、約三時間の間の記憶がありゃしません。そうだ、プレゼント!!…って、アレかぁーッ!!頭の中で全身にピンクのリボンを巻いたアタシが、でっかい金色の箱からチャラーンと出てきて、次々とセクシーポーズを決めていく。…かぁーっ。ありえない、普通の一般中学生にはできないでしょっ。つかアタシはあっち系の女優じゃないっ!!あー恥ずかしいっ…。
アタシは頭をブルブル振って、セクシーコノ子を追い出した。ふぅ…さて、帰ろうかとカバンを持ち、踏み出そうとした瞬間、教室のドアがガラッと開いた。
「コノ、大丈夫か!?ずっとボーッとして…具合悪いのかっ!?」
哲希だ。心配して今まで残っててくれたんだ…コノ子、幸せっす!!
「ううん、全然大丈夫だよ。ありがとう、哲希!今まで待っててくれるなんて、すっごいうれ…」
嬉しいよ、大好き♪って言いたかったのに…。さっき追い出したセクシーコノ子がまた戻って来やがった。自由の女神のように片手を挙げ、ハッピーバースデーを歌いながら、くるくる回っている。
ボンッ!!と、顔から火が出たかと思った。不思議そうに覗き込む哲希の顔を恥ずかしくてまともに見れない。
「ホントに大丈夫かよ!?顔真っ赤…熱でもあるんじゃ…」
哲希の手がアタシの額にのびる。
「わっ」
アタシは反射的に一歩後ろへ引いた。だって…こんな真っ赤な顔見せたくないし、素裸のアタシがまだ頭の中で踊ってたんだもん。
「あ、あの…本当大丈夫だから!気にしないでっ。そんじゃぁアタシ帰るね!!ばいばいっ」
出ました、アタシの得意技『逃走』!哲希に呼び止められようが、先生の一人や二人タックルして倒そうが、お構いなしっ!!目指すはマイホーム!!アタシはセクシーコノ子を追い払うように無我夢中で走った。
それから一週間、アタシは一度も哲希に会わず、悩みまくった。大好きな哲希…その哲希が、プレゼントはアタシがいいだって。すげぇ厳選してアタシなんだって。大好きな人の為に恥を知るか…そんなに喜んではくれないかもしれないけど、他の物をあげるか…うーん、あーう、ん〜ん、おーう…。よし…決まった…。一週間も悩んだし、悔いは無い!!気合いじゃ、気合いぃ!!
放課後アタシは、日菜に哲希を屋上に連れてくるよう頼んだ。今、アタシは頭にピンクのリボンを巻き付けている。ぃよし、完璧!あとは、哲希が来るのを待つだけ…。やっぱ好きな人には喜んでもらいたい…そう、アタシがプレゼントです!
「コノォ?どうし…」
来た!!
「ぅお、お誕生日おめでとう!」
「どうした、ソレ…」
「あ、あのね、プレゼントが…」
「いや、まず聞け…」
「あた、アタシが…」
「だから、そのリボン」
「アタシがプレゼントなのっっ」
…よし!!喜んでる!!嬉しすぎて声も出ないってか。口を閉じるのも忘れて…勇気出したかいがあった!
「…くっ、アッハハハ!!コノ、アホか!?」
はぁ?アホ?欲しいモノあげたのに、アホ扱いって…どういうこと。
「俺の言い方も悪かったな。あれは、コノがいれば何も要らないって意味!」
…何ですとォォ!?じゃあ…アタシの勘違い…?セクシーコノ子がガラガラ崩れていく。
「…うわ、ごめん。アタシ…てっきり…。馬鹿馬鹿しいよね…本当アタシってダメ人間だ…」
恥ずかしいも度を超えると何も感じない。自分があんまり馬鹿で情けないし、嫌になる…。
「ごめん、哲希。ろくに誕生日祝ってあげらんなくて…本当は特別にしたかったんだけど…プレゼントも何も無い…」
アタシの勘違いのせいでとんだ誕生日になっちゃった…。相当ショック。