館内ツアーの始まり……-4
ロビーから重そうな木のドアを開けて小さな部屋に入ると、そこには見たことのない数点の器具が展示されていた。
「あなた、お名前は?」
ヴァギ奈はいきなり彩子のほうを見てそう問う。
「えっ、あの、彩子です……」
「彩子さんね、では彩子さん、ワタクシの名前は何かしら?」
「えっ? えっ?」
「あらぁ? 覚えていないの、ワタクシの名前よ?」
「あっ、あのぉ……」
「哀しいわねぇ……、あれだけ一所懸命に話をして、名前も覚えてもらえてないなんて……」
「えっ、あのっ、えっと、ヴァ、ヴァギ奈さん」
彩子は小さな小さな声でそう言う。
「えっ? なに? 聞こえないわよ。大きな声で言いなさい」
(や、やだぁ、恥ずかしい……。み、みんな見てるし……)
ライダースーツの男二人はニヤニヤとして彩子を見ており、熟女二人組は、やだぁ、もうっ、エッチねぇ〜と言い合って笑っている。
「ヴァ、ヴァギ奈さんですっ!」
彩子は頬を紅らめながら大声で叫んだ。
「あら、よかったわ。なにか恥ずかしがる事でもあるのかしらねぇ。ねぇ、あなた?」
今度はパーマの五十代女性に向かってそう言う。
「えっ?」
女性は突然の振りにビックリしている。
「ワタクシの名前に恥ずかしい要素なんてないわよねぇ。でも、あなた、ワタクシの名前、これ英語名なのよ、分かる? ワタクシの日本語の名前を教えて欲しいわね、どう?」
「えっ、やだぁ〜」
「まじぃ?」
五十代のパーマ茶髪の女性が笑い、隣のミニスカートのメガネ美人が驚きの声を上げる。
「あらあらぁ、何か恥ずかしいことでもあるのかしらぁ。それに十代二十代の乙女じゃあるまいし、大人の女性のあなたが何をカマトトぶっているのかしらねぇ。あなた、名前は?」
パーマの五十代女性は素直に応える。
「さ、幸江です……」
「ねぇ、幸江さん、ワタクシの名前の日本語名を教えて下さらない?」
「えっ、あっ……、あのっ……」
幸江は戸惑いながらとなりのミニスカートメガネ美人を見る。
「もう言っちゃいなよぉぉ……」
メガネ美人は他人事のように、そう突き離す。
「えっー? も、もうっ……いやだぁ……」
一瞬の沈黙の後で……。
「……ん……こ……です……」
かなり小さなカスれた声で応えたが、
「えっ? なになに? 全然聞こえないわよぉ!」
と言ったヴァギ奈は、展示品のテーブルに鞭を振り下ろし、ビッシィッという音が小さな部屋に何度も反響する。
「オ、オマンコですっ!」
顔を下に向けながら幸江はそう怒鳴るように言うと、恥ずかしくて目を瞑ってしまった。
「あらあらぁ、今あなた物凄く恥ずかしい言葉を口にしましたよね? えっ、なに? もう一度言ってみて」
「だ、だからぁ、オマンコです!」
目を瞑り下を向いたまま幸江はまた叫んだ。