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気配
【スポーツ 官能小説】

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気配-10

 上下の手のひらに力を入れ、愛衣の身体を少し動かす。指先に伝わる胸乳と媚丘の柔らかみが増した。一センチばかり後ろに重心をかけたところで、サラブレットの巨体にとっては誤差みたいなものだ。何の改善にもならない。遠目では全く動いていないように見えたが、実際は僅かに前後に揺れていた。腕を固めてやると、指に肉体が擦れる。匂いがいけない。手触りが反則だ。汗蒸した若いボディに誘われて、指の関節が動いてしまう。
「……あっ、やっ!!」
 圧が一定増したところで、愛衣がハッキリとした声を上げた。その声で我に返って両手を引いた。
 何をやってるんだ、と思ったが全てが手遅れだった。背筋が凍る。誰がどう見ても、許可を得ていないのに――得られるはずもないのに、中年男が未成年の女の子のバストを揉み、股ぐらをイジくったのだ。
「いや、わるい……」
 エンジンの回転数が落ちていくように、軋みのテンポが落ちていった。遂ぞ微動だにしなかった木馬を止めた愛衣は、ゆっくりと腰を下ろした。真下を向いている。鼻を啜っている。鞍に水滴が落ちた。
 当たり前だ。こんなことをされて、わるい、で済む筈がない。悲鳴を上げることもできないくらいの恐怖だったに違いない。
「……おい」
 恵美は何と言うだろう。あの優しい女のあらゆる暴力も、満腔の軽蔑も覚悟しなければならない。どこにでも突き出していい、そう言ってやろうと思った時、
「浮かんでるみたいだった」
 と愛衣が呟いた。征嗣と同じ感慨を抱いたわけだが、狼藉の被害者が今言うことではなかった。混乱する征嗣を置いて、愛衣は再び腰を上げると、騎乗ポーズを取った。
「身体が熱い」
 顔を横に向け、斜め上方の征嗣を見てきた。その瞳が潤んでいる。恐懼の涙には見えなかった。頬が赤らんでいる。そのまま腕が滑らかに木馬を頷かせ始めた。徐々にスピードを上げていく。
「……ずっと追ってたのに、わからないの。今週も乗らなきゃいけないのに、全然見えてこない」
「あ、当たり前だ。そんなすぐにできるもんか」
 土曜だって、できたわけではないのだ――。それを教えるべきか迷っていると、
「お尻、熱い。……脱ぎたい」
 と言った。
「ば、馬鹿野郎、何言って――」
「脱ぎたい。追ってるからできない。脱がせて」
「……」
「はやく……、んっ……」
 声音が変わっていた。あどけなかった物言いが、息切れの中で官能的に震えていた。
 マズい、と警鐘が鳴っているのに、木馬の真後ろに回り、両手がレギンスの腰を掴んだ。丸みに沿って、恐る恐る引き下ろしていくと、その下からボクサーブリーフが顔を見せた。
「……それも」
 理想の肉体だ……。真後ろから見た愛衣の肢体の神聖さに生唾を飲んでしまった。目の前のヒップが旬の果実のように、甘ったるく背徳を誘ってくる。汗の湿り気を布地に感じつつ、ブリーフを下ろしていくと、ひたすら清らかなヒップが晒されていった。やがて産毛のみの秘丘が明るみになる。征嗣が指を食い込ませた名残で貼り付いているクロッチが剥がされると、表面に僅かに糸を引いた。卑猥な姿勢を取っているのに、その中心の狭間はあくまでも慎ましやかにほころんでいる。
「んっ……、す、すごい見てる……」
「ああ……」
「……き、昨日と同じ」
「フォームを崩すな」
 征嗣は畝の両側に指を添えると、左右にくつろげた。柔らかくはあるが、まだ閉じようという抵抗も強い秘裂から、花弁が蜜を煌めかせて、今にも花を開こうとしていた。そこから発せられる女香に、汗が醸す一縷の不潔さを感じても、むしろそれが痴れそうなほど頭を痺れさせてくる。
「んっ……! ……勝った時も。ジョッキーは私残して帰っていって、一人だけ……。スタンドがみんな私を見ていて、カメラがいっぱい向いてて……、すごく寂しくて、……すごく気持ちよかった。……その時と、おんなじ……」
 愛衣は息を喘がせ、「……気持よくして」
 許諾を得た征嗣は、傀儡の馬とともに蠢く花園へ顔を埋めていった。不浄の小穴に鼻先が触れて慄いた愛衣だったが、反動で背を逸らしてヌメり返る媚肉を押し付けてきた。
「すっごい……、やんっ……」
 後ろからだと一番遠い、だが味わずにはいられない雛先を剥くと、舌をいっぱいに伸ばして弾いてやる。「うああっ!」
 突然誰か部屋に入ってきても、それが誰であっても、唇を引き離せそうになかった。淫らな水撥を立てて舐め回す征嗣の鼓膜を、
「ああっ、あ……、今週の私のレース……っく、ど、どう動くの?」
 という喘ぎが震わせた瞬間、口元へトロリと熱い蜜が垂れ落ちてきた。





 柄杓を置いて、
「――いや、内にヨレたんだ。邪魔してすまん」
 そう言うと、小柴の隣に戻った。


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