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気配
【スポーツ 官能小説】

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エピローグ-2

 舌足らずになって、不安定な木馬の上にもう一方の脚も乗せてしまった。膝を使ってスムーズに腰を突き出す。秘門を広げ、揃えられた指が入ってきた。締め付ける媚肉に逆らい、複雑な襞に潜む鋭敏な一点へ指先が押し込まれ、擦られると、絶頂へ向けて性感が高まっていった。
 意識の中の、明日駆け上がるであろう急坂と重なる。
「いくっ……、ああ、……いってるっ!」
 泣いているような喘鳴を上げた愛衣は、誰一頭、前を走っていない決勝線を迎えた。痙攣しながら薄目を開けると、征嗣の腕に向かってビュッと、どこから出ているのかわからない飛沫を撒いていた。
「パパ……、ああ……」
 こんなことをしている時に、杉島さんなんていう距離で呼びたくはなかった。誰かと同じ呼び方など絶対にしたくはない。苦肉の策で思いついた呼称だが、使っている愛衣も正直、違和感を感じずにはいられなかった。
 もっと身体を合わせれば、慣れていくかもしれない。
 征嗣の肩に両手をかけて催促した。大きく開いた脚の間に、肉茎が屹立している。繋がることだけが目的ならば錠剤は必要ではなかったかもしれないが、始まってみなければわからないレースには、膨大なパターンが考えうるのだ。
 亀頭が花唇を割ってきた。身体を広げられるこの瞬間になるといつも、胸の中が熱く、甘痛くなる。
「あんっ……、せ、瀬田さんが、……出負けしたら……?」
「ぐっ……、愛衣……」
 身体の中を進んでくる途中で、征嗣がブルリと震えた。タイミングの悪い時に聞いてしまったと反省されて、愛衣は潤んだ眼差しを向け、何度も細かく頷いた。
「わ、私は……」
 明日のレースは十六頭立てだ――十五人の凡庸な騎手と、「……私は、お人形さん、だよ。パパの、パパだけのお人形さ……んんっ!!」
 奥まで入ってきて、腰を突き出すと、先端に肉壁を押された。
 自分は人形だ。中身はない。
 可愛いと持ち上げられてる人形だ。可愛いが、頭脳は入っていない。中身はないのに、勝てなくなるのが怖い心は持っている人形だ。人形を作り上げた男に作戦を注ぎ入れてもらうのを待っている。そうしなければ怖くて調整ルームに入れない、可哀想な人形だ。
 律動が始まると、愛衣の喘ぎに合わせて、木馬もミシミシといなないた。
 愛情だと勘違いして、昇華してはいけない。人形でなければ、作戦がうまくいかないような気がする。征嗣がレースに乗れなくなっても、騎手でいてくれる限りは。





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