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『キューピットの恋』
【青春 恋愛小説】

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『受身な恋〜キューピットの誤算〜』-2

放課後、教室でヤスに言われた通り、一人きりになって考えてみた。何でこうなってしまったんだろう?相談ばっかり受けてて、二人の時間を作れなかったのが原因といえばそうだけど、何か違う。もっと根本に、もっと大きな原因がある気がする。なんだろう?う〜ん…。そのとき、廊下を通り過ぎるカップルの会話が聞こえてきた。

「なぁ、この前見たいって言ってた映画、今度の日曜見にいこうぜ?」
「え、ホントに?やったぁ!じゃあ宏のおごりね♪」
「な、ふざけんなよ!…」

…そういえばこんな風に自分からデートに誘ったりしなかったなぁ。
……。そうか…わかった気がする。こうなってしまった原因。よーし、原因はわかった。あとは行動するにしてもとにかく勝負は明日だ!


で、翌日勇んで登校したものの、実際話をしようにも舞ちゃんに避けられて話ができない…困ったなぁ…。
「なぁヤス、なんかいい方法ないか?」
僕の頼みの綱は、やっぱりヤスだ。昼休みに入ったところでヤスに聞いてみた。
「うーん…それならひとつ作戦がある。ただかなり強攻突破気味な作戦だ。それでも…やるか?」
そんなこと…聞かれるまでもない。
「あったりまえだ!」
こんなところで諦めてたまるか!
「よーし、なら俺も一肌脱いでやる!ついてこい!」
そういってヤスが僕を連れてきたのは…
「放送室…?」
…まさか…
「なぁ、お前の作戦って…」
「名付けて『お昼の放送ジャック』作戦だ!」
「やっぱり…。」
ムチャクチャするなぁ。いささか呆れ気味の僕にヤスが問いかけてくる。
「なんだ?怖じ気付いたか?今なら引き返せるぜ?」
だから僕は余裕の笑みを浮かべてこう返してやった。
「まさか。上等じゃんか。その代わり、最後まで付き合ってもらうぞ。」
ヤスもまた、不適な笑みを浮かべてこう言った。
「最初っからそのつもりだっつの。…いいか?中に入ったらあとは俺がなんとかすっから、お前は言いたいことを言ってやれ。ただし、あんまり長くはできないぞ、聞き付けた先生が止めに来るはずだからな。」
こんなことに付き合ってくれる友達はヤスだけだ。僕はヤスに心の中で感謝しながら、放送室の扉を開けた。
「え、あんたら誰?今日は担当俺らだけだよな?」
「あ、私知ってる!キューピットの永見先輩ですよね?ここになにか?」
放送委員の生徒がうろたえている。どうやら後輩みたいだ。僕は頭を下げて必死に頼み込んだ。
「頼む!少しの間だけマイク貸してくれないか!?ほんの少しの間でいい!どうしても伝えなきゃいけないことがあるんだ!頼む!」
男の後輩が答える。
「えぇ、でも勝手に私用で放送使うとあとで怒られるし…」
やっぱりダメか…。僕は肩を落としかけた。ところが…
「え〜なんで?おもしろそうじゃない!どうせリクエストの曲もないし。」
女の子は意外と乗り気な反応をみせる。その後、渋る男子生徒に必死で頼み込んだ甲斐あって(女の子に『男のくせに説教くらいでびびってんじゃないわよ』と言われたのが効いたみたいだけど)OKしてくれた。よし、ここからが本番だ…。僕は深呼吸して、ゆっくり話し始めた。
『全校生徒のみなさん、こんにちわ。2年1組の永見悠士です。突然の私用な放送をすること、先にお詫びします。…僕は告白が成功して、それで満足して浮かれて、自分から相手に好きでいてもらう努力をしませんでした。自分が相手のことを好きだと伝える努力もしませんでした。ずっと受け身だったんです。だから結果として、僕はその人に嫌われてしまいました。でも、まだ僕は諦めてません。その人にどうしても話を聞いてほしくて、今こうしてしゃべっています。』
そのときヤスの声が聞こえた。
「おい、悠士、やべぇぞ!先公来やがった!」
確かにドアを叩く音と共に教員の声が聞こえる。中からカギをかけているようだが、すぐに外から開けられるだろう。
「頼む…もう少しだけ…持ち堪えてくれ。」
そう静かに答えた僕にヤスはうなずくと、
「わかった!お前ら手伝え!」
と言って、放送委員の生徒といっしょにドアを抑え始めた。…時間がない、急がないと。
『…聞こえていますか?もう、受身の恋はしません。もし、君が僕をもう一度好きになってくれるなら、今日の放課後、いつもの場所で待ってます。』
そう言い終わるのとほぼ同時に、先生が中に飛び込んできた。


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