抵抗-3
隠しようのないことに加えて、全く動くことのできない身体は、急激に襲ってきた尿意をこらえることができなくなってきていた。
触らないで欲しかった。すでに限界に達していた。
ついに、ひしゃげた尿道口が、丸く形を変え、生暖かい先走りがチョロッと湧きだしてきた。
「あああっ……なんとか、してぇ」
尿意を訴えたつもりが、男は媚薬の効果の現れを伝えたものと思っていたようだった。
「姫啼きとはよくいったもんだなぁ。……サネに塗ったとたんこれだからなぁ。……好き者の奥さんだ。良い感度してるぜ」
身体がブルブルと震え、両膝を右に左に振りながら拡げ、腹がヘコヘコと上下に蠢いている。もう、身体のどこに触れられても、漏れてしまいそうだった。
男はまだ勘違いに気がついていなかった。
股間に顔を近づけ、ガバッとあけっぴろげな秘裂を覗き込んでいた。
「さぁ、媚薬の効き目を見せてもらうよ。身体が返事をしてくれるはずだ」
女の一番敏感なところに息を吹きかけた時だった。
「ああっ、出ちゃう……」
と、その一瞬をのがさず、尚代の身体の一点から、一本の太い水の柱がほとばしり出た。
恥も外聞もなかった。そして、いかなる責めを受けようと覚悟の上だった。
尚代は、この瞬間に怒りをこめて男に向けて発射したのだ。女としての一念というものだろうか。
尚代の生暖かい水が男の目にあたり、激しく飛沫いた。
「うわっ」
顔へかけられた男が思わず叫ぶ。思わぬ出来事に男は動くこともできずに、タップリと浴びていた。
走り出た水柱は、女性独特の音を伴って、一段と太さを増して男の顔から喉元を叩き続けている。思いっきり放出できる気持ちよさと、男に対する小気味よい反撃で、身体の力が抜けていく快感だった。
男はフェイスマスクがびしょ濡れになり、とうとう顔をこすりながらベッドから転げ落ちてしまった。
「くそっ!……この女」
目的を達した尚代の放水は、急速に勢いを失って尻をつたってシーツに垂れていた。
ベッドには行き場の無くなった黄金水がシーツの上に水たまりを作っている。霧のように女の尿臭が部屋に立ちこめている。
男は立ち上がり、怒りを込めてベッドマットごと尚代を床に引き摺り降ろした。
勢い余って、尚代はベッドマットから床のカーペットに転がり出た。
そこに、男は飛びかかっていった。
馬乗りになって、再び頬へ平手打ちを始めた。
男から一本取ったという快感があったのもつかの間、尚代は頬を打たれる痛みに、これから自分の身に起こるであろう不安が急激に増してきた。
そして、男に対して、してしまったことを後悔し始めた。