サーガの過去-6
「2度も接近したと言うのに捕まえられなかったか…。屈辱だわ。」
燃えたぎる車を睨みつけながら若菜が言った。そんな若菜にマギーはふと言った。
「サーガはどうやって刑務所内に入り込めたんですか?ここに入るにはまずあの門の警備でチェックを受けなくてはならないし、そこで怪しい人は止められるはずじゃ…。」
「監視カメラ映像を見れば分かると思うけど、きっと業者のトラックが入って来たはずだわ?そして車に横着けして監視から見えない死角を作り仕掛けたんじゃないかな。どこかで運転手を引きづり出して入れ替わってね。それかお金で話しをつけたか。お金で話をつけたんでしょうね。きっと。会社名が書かれたトラックに通行証があれば運転手がいつもと違くてもたいして気にしないでしょ。いつもの運転手が休みで違う運転手が来たんだと。それにこんな事件を起こすだなんて警備も思ってないでしょ?いつもの通り納品をしに業者が来たぐらいにしか思わないわよ、普通。」
「なるほど。それに刑務所内にスパイを忍び込ませて内情を掴んでいるだろうし。」
「そーゆー事。どこが緩いとかどこがチェックが厳しいとか、お見通しよ、サーガは。それにこれは私の想像だけど、スパイを使って隙を見て深野を刑務所から脱獄させるつもりだったんじゃないかなって。」
「えっ?でもサーガにとって深野は必要な人間じゃないじゃないですか。」
「ええ。邪魔な存在ね。」
「だったら脱獄させる意味がないじゃないですか。それどころかずっと服役しててくれた方がフレアを完全支配するのに都合いいんじゃ。」
「違うわ?脱獄させた方が都合いいのよ。」
「どうしてですか??出て来られたら邪魔なんですよね??」
「邪魔だから出させるのよ。」
「邪魔だから…?あ…!もしかして…」
「そう。深野を信奉する者は未だにたくさんいる。その信奉者に深野より自分が強いんだと知らしめる。深野の時代は終わったんだ、これからは自分がリーダーだとね。」
「邪魔な者は消す…ですか。」
「ええ。深野の信奉者から夢と希望を断ち切らせる為にね。信奉者の目の前で深野を殺し、絶望の淵に落とされた信者を恐怖で支配する。そのつもりだったんでしょ。人間は精神的に弱っている時がつけ込みドコロだからね。そして一気に下條派を手に入れるつもりだったんじゃないかって。そうなればフレアは巨大勢力になる。社会を動かせるほどに、ね。」
「なんて奴なんですか、サーガは!」
そんなマギーに低く冷たい声で若菜は言った。
「それがテロリストなのよ。」
「…」
マギーはその時初めて気付いた。もう既に自分がテロリストの戦い中に足を踏み入れているんだと言う事を。