謎の支配者、サーガ-10
目覚めた時には9時。全てにおいて間に合わない時間だった。兄妹や子供は俊介の母が気を利かせてくれて応対してくれたから助かった。しかしお互い遅刻である。
「俊介、送ってって!」
急がなければならない状況で、若菜はさすがに精子が乾いてパリパリの顔で行く訳にも行かず、取り敢えず顔だけ洗いメークをして俊介の車に乗り込んだ。
「俺、直接現場に行った事にしよっと…」
「き、汚い!!」
若菜には会議がある。完全に遅刻だ。この日は10時から始まる予定だ。何とかギリギリ間に合いそうだが、出勤時間はとうに過ぎている。若菜は焦っていた。
あと10分で10時と言うとこでマギーから電話があった。
「若菜さん、会議に来ますよね?」
「うん、もうちょっとで着くわ!」
「…もしかして寝坊ですか…?」
「…う、うん。」
「フッ…」
「い、今笑った!?」
「イヤイヤ…。フフフ」
「!?何でもっと早く電話くれないのよ!」
「え〜?だって若菜さんとあろう者がまさか遅刻するだなんて思ってもいないですもん♪」
「…何それ??厭味のつもり…?」
「い〜え、じゃあ早く来て下さいね!フフフ」
マギーは嬉しそうに電話を切った。
「クッソー!アイツ、きっと私が寝坊した事をみんなに言いふらしてるのよ、今頃!!」
そう言って憮然とした若菜。やがて県警本部に着き他人の目から逃げるかのように会議に入った若菜。みんなのニヤニヤした顔が耐えられなかった。
会議が終わると遅刻の始末書を書き提出した若菜だが、すぐに本部長に呼び出された。
「あのな、上原君。こんな始末書、上に上げられないだろ…。昨晩夫との久々のセックスに燃えて朝まで営みを行ってしまい、5時まで起きてたのですがついつい寝てしまいました…。って」
「私、嘘は嫌いなので。」
「いや〜、困るよ、これは…。」
「…。」
頑固な若菜を説得するのが大変だった。しかし何とか納得させ一般的な内容の始末書を書かせた佐藤本部長は大きく溜息をついた。
「まー、上原君らしいけどな。」
そう言ってダメ出し始末書は破り捨てたのであった。
何はともあれ寝不足ではあるが身も心もリフレッシュした若菜はいよいよサーガとの戦いに望むべく東京刑務所に向かうのであった。