第4話 開花する狭間で-3
目を瞑れば、リアルに感じる彼の物。
まるで結ばれたかのように、私の胸の高鳴りはピークを越えていた。
私が望む、彼と過ごす一時。
バイブレーターをゆっくり往復させると、彼の未熟な腰つきさえ目に見える様だった。
「はあ・・・はあ・・・陸人君・・・・・・」
思わず彼の名前を、私は小さな声で口にした。
今までは心の中だけに収めていたが、押し寄せる快楽により理性を失っていた。
全てが具体的になり、より身近に感じた私は彼の名前を口にしたのだろう。
彼とのセックスに、私は思いを馳せていた。
徐々にと早くなる、往復するバイブレーター。
肉厚で包み込んで、心地良い振動を受けながら樹液を撒き散らしていた。
私の履いているパンストさえも染み渡らせて・・・・・・・。
この時、改めて実感するパンストを履いたままのセックス。
腰周りから足先までを覆う、ナイロンの繊維に違和感を感じながら・・・・・・。
ガーターストッキングならともかく、男女間のセックスにおいてパンストを履いたままは、初めての経験。
彼の性癖に関わる事で、私もブログの女性の様に開花されて行くのだろう。
もう、待ちわびる事さえ耐えきれない。
私はバイブレーターを往復させながらも、一点を指先でなぞりはじめた。
早く迎えたい・・・・・・彼との至福の瞬間。
それを思うと、彼の腰つきに酔いしれる、私を思い描いていた。
「あっ・・あっ・・・陸人君そうよ!・・・そのまま激しくするの!」
再び彼の事を口にする私の声は、部屋中に響き渡った。
まるで、その場を体現する臨場感。
もう往復するバイブレーターは、彼その物になっていた。
徐々にと近づく、快楽の極み。
私は指先を激しくなぞりながら、バイブレーターを深く刺し込むようにも往復させた。
迎える瞬間の境界線。
「陸人君、駄目〜・・・おばさんイッっちゃいそうよ・・・・・・」
その狭間で葛藤する瞬間だった。
ピンポン!・・・・・・
突如、私のスカートのポケットから、振動と供にLINEの着信音が鳴った。
その反動から、私自身も頂点を極めていた。
「はあ・・・はあ・・・・・」
快楽の極みに辿り着き、天井を見上げながら私は息を切らす。
今しがたに鳴った、LINEの着信音にも胸の高鳴りが重なっていた。
そして、恐る恐るスカートのポケットからスマホを取り出すと、その表示画面を見て私の頬からは涙が伝っていた。
『rikuがLINE IDで友だち追加されました』
待ちわびていた、彼からのLINE登録の表示だった。
そう・・・私がチョコレートに託した想いとは、彼とLINEで繋がる事。
チョコレートと一緒に添えた簡単な手紙には、私の LINE IDも書いていたのだ。
皮肉にも、彼のLINE登録の反動で迎えた快楽の極み。
つまり、間接的にも彼にイカされた事にもなる
私にしてみれば本望でもあり、思わず手元に置いてある枕を抱きしめて、まるで彼の背中に手を回す様に幸せを噛み締めた。
もう、私のシナリオは動き出そうとしていた。
LINEで繋がる様に、彼との関係性も深く繋がる為にも・・・・・・。
それは正しく、早春でもあった。
−つづく−