初デート-1
「こんなの着れないに決まってるでしょ!」
PCモニターに映し出された、マイクロミニのワンピースを見て声を荒げる。
「これは十代の若い子が着るもんだし、そもそも、ショートパンツやレギンス、スコートと合わせて着るものよ!」
「お前は十代に負けてないよ」僕がおだてても、妻は頑として聞かない。
僕たちは来週の太田君と妻のデートで着る服を探していた。彼は翌日、早速デートを申し込んできたらしい。押し切られるように承諾すると、彼は速攻でシフト調整して来週の金曜日に決まったという。
僕の野外露出の性癖をくどくどと説明して、渋る彼女の了承を得てようやく服が決まった。ミニスカート、ワンピース、レギンス、Tシャツ、ブラウスだ。アダルトショップで購入した品々は、どれも安価だった。作りが安っぽいのだろう。今から楽しみでしょうがない。週明けには届くそうだが、僕の楽しみのために当日まで着ないように頼んだ。
「ほんとにいいの? こんなことしちゃって」
デートの日が近づくにつれ、妻の質問が増えてゆく。「それが望みなんだ」僕は毎回、同じ返事を繰り返した。太田君にもメールや電話で、デートを成功させてくれるよう頼んだ。その日を待ち望み仕事に打ち込んだ。
デート当日。太田君は、僕の出社より早く我が家に来た。僕は彼にカメラの携帯バックを手渡して出社した。僕を見送る妻にはいつものような元気さがなかった。その日は仕事が手に付かず、早々に退社した。
午後4時、チャイムが鳴る。僕はソファーでソワソワしていた。ガチャ。開錠の音と共に開いたドアから妻が入って来た。その後ろにカメラを構える太田君がついてくる。
「お帰り」僕の言葉に、妻はとても気まずそうに返事をして、そのまま寝室に入った。太田君が僕にカメラのセットを手渡す。部屋着に着替えた妻は、そのまま夕飯の準備に取り掛かった。
「まぁ、ゆっくりしていけよ」
太田君は「今日は帰ります」としょんぼりと出て行った。妻はそれを見送ることもなく、キッチンで調理を続けていた。
「今日どうだった?」
「うん」ひたすら気まずそうに答える。僕まで気まずくなり、彼女の背中に声をかける。
「ごめんな、変なこと頼んじゃって」僕の言葉に妻は少し考え込み、肩をぐるぐる回して振り向いた。
「私が引き受けたんだもん! ごめんね。変な空気にしちゃって。頑張る……けど〜、太田君大丈夫かなぁ?」
彼女の表情に明るさが戻った。その後、そのことは一切話さなかった。食事を済ませると「疲れたから先、休ませてもらうね」と妻は寝室に消えた。その髪からは、いつもとは違うシャンプーの香りが漂っていた。
僕は早速今日の成果をチェックする。動画は寝室から妻が出てくるところから始まった。
「おお、すごいですねー」太田君は先ほどとは違いハイテンションだ。彼女はネットで購入した衣装を身に着けていた。カメラは足元から舐めあげるように映してゆく。足首からヒザは生足。その先はタイトな五分丈のレギンス。細い太ももの間は、はっきりそれと分かる大陰唇のかたちを作り上げていた。ショーツのラインもしっかり出ている。レギンスがウエストで途切れると、肌が5センチほど露わになり。身体に密着したタイトなTシャツが肌を隠す。Tシャツにはブラジャーのラインがくっきりと浮き出ていた。妻は恥ずかしそうだ。
カメラを手に、後ろ歩きをしているのだろう。太田君が先導し、その後を妻が身をかがめついていく。駐車場に着くと、白い軽四に乗り込んだ。太田君の車だ。妻も助手席へ逃げ込む。カメラは車のダッシュボードの上に置かれ車内の二人を映す。車内の閉鎖的な空間に妻は安堵しているようだ。走行する車中、彼はひっきりなしにしゃべり、妻は頷くだけだった。食事に誘う彼に妻はこんな格好じゃ嫌だと言うばかり。どうしようか? という太田君だが、カメラに映る車窓からの景色でおおよその見当はついた。一時間半ほど走ると隣の市の繁華街に付く。繁華街には飲み屋街があり、そこに隣接するようにラブホテル群がある。車はラブホテル群の一角にある、コインパーキングに止められた。高速道路を使い、もう少し足をのばし郊外に行けば駐車場付のラブホテルもあるのだが、県庁所在地のこの辺りは人口が密集し土地代が高いせいだろう、駐車場付のラブホテルはない。利用者は飲み屋街から流れ込んでくるか、車であればコインパーキングを利用するしかない。
太田君が車から降りる。妻も恥ずかしそうに助手席から出てくる。太田君は妻の手を掴み、コインパーキングから20メートルほど離れたホテルへ入っていった。妻は人目を避けるように、手を引かれるままホテルへ入った。
三脚で固定されたカメラは、ベッドの足元から枕に向けてのアングルであった。2人はカメラの正面に並んで座る。いきなり抱きつきキスをせがむ太田君に、妻はシャワーを先に浴びさせてと言う。彼はカメラの前でシャツとズボンを脱ぎ、トランクス一枚の姿になり妻を待った。シャワーの音がやむ。そして、ドライヤーの音。しばらくして、バスローブ姿の妻がカメラの前を横切り、太田君の横にそっと腰を下ろす。しばしの沈黙。おもむろに彼が妻を抱き寄せ、キスを迫る。顔をそむける妻だったが、やがて太田君の唇が彼女のそれを捉える。静止画の様に2人は唇を合わせ固まり、そっと唇を離し妻が照れくさそうに笑う。太田君の手がバスローブ越しの妻の肌を愛撫し始める。妻の身体が徐々にほぐれていく。やがて唇を愛撫していた彼の舌を、妻がそっと受け入れる。妻の口を激しく犯していることが、彼女の変形する頬の凹凸でわかった。
彼は鎖を放った犬のように妻をベッドに押し倒し、バスローブを引きはがす。妻の裸体の全てが、彼の目に晒された。