体の関係-1
聡真は、言わばマーヤから貰った元気を、全力でヴィットリヤに注いだ。それでも尚、教材研究の余力があった。そして、生徒に注ぐ愛情も湧いて枯れなかった。自分は蘇ったのだと聡真は思った。蘇りのもとの元気は、断ってもマーヤが注いでくるのである。
聡真に現実の対象が現れたら、それまでインターネットで少女たちと関わった経験や、教師として積み上げられた生徒指導の技量が、遺憾なく力を発揮した。即ち、聡真はヴィットリヤと友達以上の関係に、苦もなく至ることができた。
「施設の人にしているの、どんな感じか、僕にしてみてくれない。体のこと、わかるんでしょ。」
「いいよ。でもなんでかな、恥ずかしい。」
小学生に下着を下された聡真は、握手の気軽さで掴んで探る細い指に少したじろぎ、それをまた体が隠せずにいたのだが、子供から
「怖くない。大丈夫よ。最初はちょっと痛いかもね。」
とまるで小さな動物に話すふうの言い方で慰められると、却って勇み立つほどになった。少女は細い指先三本でにこやかに摘み、細かくさすり始めた。頼んだ四度目まで少女はたちまち済ませ、
「もう体に悪いからやめるよ。」
言いながら指を自分のハンカチで拭いた。
「どうだった?」
男の体がそこの様子で分かるのだと言う少女に聡真は聞いてみた。
「お酒飲むでしょう? それから、腰が悪いみたい。あと、なんだろう、少ないよね。大きさも違うし。毎日揉んであげようか。よくなるよ。」
根もとから残りを丁寧に搾り出してくれているヴィットリヤに、聡真は、女の子のが知りたくて堪らないと正直に訴えてみた。
「嫌いにならない? きっと驚くよ。」
そう不安を気遣いの言葉に少女は変えてみせた。
「こんな所からかわいい赤ちゃんが生まれてくるなんて、想像できないね。」
机に座って開いていた腿の付け根から、男のそんな言葉が漏れるのを聞いてマーヤは、あの子のと比べられていると思いながら、かわいい赤ちゃんを産んでみせてやろうと心に願うのだった。
好きな男の顔が半分のぞく、その所からは、自分で分かるほどにおいが立ち昇ってくる。自分の汚いものはこの男がみな口に入れてきた。嫌いな女だったらこうはしないはずだ。マーヤは、自分が最初から愛されていたという物語を作って、それを今では信じ込んでいた。だから、聡真があの子のもとへ行くのは浮気に違いないのだった。
行為に夢中な男に比べて冷静な女のマーヤは、股に懸命な様子で顔をうずめている男を手元の携帯電話で撮影してみた。聡真はちらと視線を寄こしただけで何も言わなかった。これをマーヤはインターネットのいつものサイトに投稿したくなった。
美術部の余裕で、よくある面白い絵だと思いながら、男はばかで下品な生き物なのだとマーヤには思われてきた。しかし、撮影する画面越しに男のばかな顔を見ながら、女のところは喜びに一人で動き始めて、海の貝のように潮を吹いた。聡真がそのときマーヤの手から携帯電話を取り上げた。代わって写し続けた。
まだ動いて潮を吹く複雑な赤い溝の向こうに、口を開いたままうめくマーヤの小さな顔が写っていた。聡真は、この醜い存在を消しゴムで消すようなつもりで、マーヤに入り込み、激しく体を動かした。
二人は互いの性そのものに感情を吐きつくさせた。苦痛か怒りにひどく歪んだような表情の男と、口を開け閉めして白目を剥く女の顔に、人間らしさなど見られなかったが、命は躍動してやまなかった。