ノウム原理教教祖、深野浄京-7
若菜を殆ど超能力者を見て若干警戒する高城。運転しながら様子を見ながら言う。
「腹減ったか?」
「あー、はい。空きました。宙に浮いたんで!」
「ハハハ…」
苦笑いする高城。
「何が食べたい?」
「そうですね〜、昨日の夜はラーメン食べたんで、カツ丼が食べたいかなぁ…」
「…半分オヤジだな…。」
「え〜?何でですかぁ?酷いなぁ♪」
良く言われるのだろう。対応が慣れていた。
「じゃあ私が俺が大好きなカツ丼屋連れてってやるよ。」
「本当ですか!?嬉しいですぅ♪でも副総監も俺って言うんですね!」
「ん?ハハハ、まぁな。本当はみんなが言うような紳士的な男じゃないんだよ、俺はね。」
「へぇ〜。」
そんな会話をしながら駐車場に車を停め店に入る。男感漂う大衆食堂と言った感じだ。若菜は完全に浮いているが、若菜はこういう雰囲気の店が大好きだった。
「いらっしゃい!高城君、久しぶりだね!」
「どうも!」
顔見知りのようだ。店の主人が若菜を見て高城をからかう。
「おいおい、副総監が不倫とかマズいだろ?」
「ハハハ!違うよ。上原のお嬢さんだ。」
若菜は驚いた。高城が父親を知っているなどと聞いた事がなかったからだ。店の主人、山下は驚く。
「えっ!?正芳君の…!?」
絶句した様子だ。何となく申し訳なさそうにお辞儀をする若菜。
「は、初めまして、上原若菜です。」
山下は今にも涙を零しそうな程に感極まっている。
「そうか…、君が若菜ちゃんか…。そうかそうか…」
もはや仕事そっちのけであった。山下は全て知っていた。正芳が亡くなった事は勿論、若菜が仇を取った事、刑務所に入った事、そして復職した事。全部高城から聞いていた。
「テレビとかで見るより全然美人さんで分からなかったよ。」
「ありがとうごさいます。」
本当はおちゃらけようとしたが、空気を読んだ。
「そうかぁ。じゃあお父さんが大好きだったカツ丼、心を込めて作ってやるからなー!」
「ありがとうごさいます。」
山下は腕まくりをして調理に向かった。ここで一つ疑問が生じた。
「副総監、どうして父が東京のこのお店に?」
正芳が東京で暮らしていた話など聞いた事がない若菜は不思議に思った。そして高城は若菜が驚愕する一言を言った。
「俺と上原は同期で公安で働いていたんだ。」
「こ、公安!?父が…!?」
「ああ。」
高城は昔を懐かしむかのような顔をしながらそう言った。