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BLOOD LINE
【女性向け 官能小説】

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3-2

暗い部屋に電気をつけ、エアコンを入れると結子ははぁーとため息をつきながらベッドに座った。狭いカウンターの中での立ち仕事では無理もない。
「良かったらシャワー先に使って。私は少しウダウダしたいから」
「いや、でも」
「いいじゃない。どうせするんだから。でしょ?」
否定できない。今夜だけ、と言った自分の言葉を彼女は忘れているのかも知れない。それとも、こうしてのこのこ会いに来た自分も、ただ彼女を寝るだけの対象としてしか見ていない男と思われているのか。

「今度の土日、休みが取れるならどこかへ行かないか?」
「うーん。土曜は店が混むから無理ね。日曜なら休めるけど」
「日帰りになるな。近場で行きたいところがあれば行こうよ」
そうねぇ、と考えている。
激しく愛し合うにはベッドが狭く、二人は床の上でセックスした。二人の汗を吸い込んだように、下に敷いたバスタオルは湿り気を帯びている。
うつ伏せになった結子の背中を撫でながら、富岡は自分が引き返せるのかを考えていた。
愛していると言うよりも、この関係を楽しんでいることは否めない。
かつて妻ともそうだったように、やがて色褪せることを知りつつ大人は恋に落ちる。
「私、ディズニーランドへ行きたい」
「え?」
「むかーし、ほんとに小さい頃行ったらしいんだけど覚えてないのよね。行ったら少しは思い出すかな?」
「お母さんと?」
「うん、そんな感じ。それよりも、ここに来て平気なの?」
ギクリとする。妻といい結子といい、女性が何気なく口にする言葉は突き刺さるものばかりだ。
「今それを考えていたんだ。俺はずるい男だよな。仕事で知り合った君をこうやって抱きながら、明日には家に帰るんだ」
結子はごろんと仰向けになった。小ぶりな乳房が露になる。
「私は相手の生活には関知しないから安心して。結婚してとも言わないし、責任取ってとも言わない。その代わり、私のことも縛り付けないでね」
そう言われると肩透かしを食ったような気分になる。本当に勝手な話だ。
「富岡さんの家庭がうまく行こうが壊れようが、興味ない。そばにいる時だけ繋がってれば満足よ」
眠くなっちゃった。そう言って目を閉じた。
「風邪ひくぞ」
富岡はベッドからタオルケットを引き下ろし、結子にかけてやった。そうだ。そもそも「責任」とか「倫理感」なんてことを考えるなら、こんな関係にはならなかった。常に正しい道を歩こうと思う人間なら、誘惑と言う障害物は避けて通るものだ。



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