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BLOOD LINE
【女性向け 官能小説】

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3-1

久し振りに自宅で夕食を取った富岡は、23時からのニュースをぼんやりと見ていた。背後のキッチンから食洗機の耳障りな音が聞こえて来る。
「ねぇ、研修で大阪に行かなきゃいけないの」
「いつから?」
「来週。木金なんだけど、大阪に友だちがいるでしょ?土日に会って来ていいかな?」
「ああ、大学の友達だっけ?」
「そう。旦那に子供預けるから遊びに行こうって言うし、こんな機会でもないとね」
「いいよ。ゆっくりしておいで」
「悪いね」
そう言うと、先に使うねと言って風呂へ向かった。
その晩、久し振りに妻が彼を求めて来た。中年になり、多少の肉は付いて来たがそれでも妻は気を使っていることもあり、まだまだ若々しい。
「たまにしないと忘れちゃうでしょ?外でしてなければの話だけどね」
何気なく言ったのだろうが、身に覚えがあるだけにドキッとした。
「本当に忘れちゃった。どうやるんだっけ?」
「バカ」
妻は富岡にキスすると、自分からパジャマを脱いだ。柔らかい乳房に口をつけると、鮮明に結子の細い体を思い出した。
妻を抱きながら、心では結子を抱いていた。

予感はあった。
自分はまた再び横須賀に来るだろうと思っていた。会いに行ってもいいかと電話した時、結子は驚く風もなく、拒みもしなかった。
ただ、店が終わるまで待っていて欲しいと言われ、富岡は仕事を終えてから20時過ぎに横須賀へ向かった。軽く夕飯を済ませ、臨海公園をブラブラして時間を潰した。
目の前には相変わらず巨大な軍艦がある。すぐそこのアメリカ。
そして、そのアメリカに恩恵と侮辱を受けながらこの小さな街はそれなりに栄えて来た。
こんな小さな街は嫌だと悔しそうにつぶやいた結子の気持ちが少しだけわかるような気がする。
「OLDIES」のドアを押すと、以前と違って店は空いていた。結子の隣りには小柄の初老の女がいる。
「いらっしゃい」
ママが声をかけた。結子は富岡を見ると微笑んだ。
「ビールを」
冷えたバドワイザーが目の前に置かれる。
「お仕事帰り?」
ママが気さくに声をかける。日本人客が少ない店だけに、一人でやって来る客に気を配っているようだ。
「ママ。こちら週刊誌の記者さん。あいつのことで、ね」
結子は彼の存在を隠すまでもなく、ママに紹介した。富岡は反射的に立ち上がり名刺を手渡した。
「週間スナイパー?私、知らないわ」
だろうな、と思った。美容院や調剤薬局の待合室に置いてある部類の雑誌ではない。
「まぁ、結子ちゃんがいいなら構わないけど、あんまり根掘り葉掘りやめてね。この子、もう充分傷ついてるんだから」
「はい」
結子を見ると、グラスを拭きながらため息を漏らすように小さく笑っていた。


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