見極める能力-8
「ビッチ女がどうかしたのか??」
不思議そうに聞いた喜多に興奮気味に言う。
「事件の犯人は被害者女性にビッチ女と罵声を浴びせて喜んでたとの報告があったわ?ねぇ、そのビッチって言葉って、そんなに良く使われる言葉かな??」
みんな首を捻る。
「いや〜、そう言われればそんな聞かないよな。」
「大悟は??」
「マズ聞かないッスね。」
「エリサは…?」
若菜がいきなり呼び捨てで呼び始めた事を気にしつつもスルーして答えた。
「聞かないですね。街に溢れる言葉ではないと。」
若菜は声を大きくして言った。
「でしょ!?私だってビッチって言葉、久々に被害者女性の口から聞いたわ?それが立て続けに2度も耳に入るのは決して偶然じゃないと思うの。私の勘では今回の殺人犯とデリ嬢のミズキちゃんをビッチと呼んだお客はきっと同じだと思うの!ねぇカズちゃん、そのデリヘルのお店の番号教えて!」
カズは慌てながら携帯の発信履歴を見せた。若菜はカズから携帯を奪い取ると登録名を見て呆れた。
「ドスケベ素人オネーサマクラブ…。な、何て名前…」
喜多は恥ずかしそうに頭を掻いて笑った。若菜はまずマギーに電話しドスケベ素人オネーサマと言うデリヘルの情報を調べさせた。5分後ぐらいにマギーから報告があった事を手帳に書き込んだ。そしてすぐさま電話をかけた。
「はい、ドスケベ素人オネーサマクラブです。」
若菜は改めてその店名に呆れてしまう。
「恐れ入ります。今日はミズキちゃんはご出勤でしょうか?」
電話に出た店員は女の声に戸惑っているようだ。
「は、はい…。しかし本日は予約でいっぱいでして…。」
女性からの電話など今までなかったのであろう。若干不信感を感じさせる口調であった。
「そう。お仕事は何時に終わる予定ですか?」
「あの…、どう言ったご用件で…。」
「私、千城県警本部の上原若菜と申します。お宅で働いているミズキと言う女性にお話しを伺いたいのですが。」
県警本部と聞いて身構える店員。
「いやちょっとそのような…」
拒否する事は百も承知だ。若菜は店員の言葉を遮り一方的にまくし立てる。
「あなた吉田輝雄さんよね?生まれは北海道、今は中央市に住んでる。去年デリヘル経営を始めて順調なようね?でもね、本番行為は違法よ?分かってるわよね?あなたの住所から何から全部調べはついてるわ?今すぐにでも逮捕しに行ってもいいけど??」
店員、いや店長の吉田は若菜の勢いに圧倒される。
「ち、ちょっと…」
「いーい、まーお客さんもせっかく高いお金払ってセックス出来なかったらがっかりするでしょうから見逃してあげりわ?その代わり仕事が終わったら事情聴取させてくれるわよね?勿論ミズキさんが何かした訳じゃない。私が聞きたいのはミズキさんが相手したお客の事。何も心配いらないわ?お客さんからドスケベ素人オネーサマクラブを取り上げたりしないから安心して?分かった?だから仕事が終わったらこの携帯に電話ちょうだい。」
「は、はぁ…」
「もしすっぽかしたらあなたを地獄の底まで探し出してブタ箱突っ込んでやるからね!?」
「わ、分かりましたよ…、します、しますよ!」
若菜はニヤッと笑う。
「よろしい。では後ほど。」
そう言って電話を切った。