見極める能力-12
「番号を控えさせていただいてもいい?」
「どうぞどうぞ!」
何の抵抗もなく携帯を手渡す吉田。若菜は手帳に番号を書き写した。
「麗美さん、その加藤竜彦って言うお客さんはどう?」
「どうと言われますと…?」
「例えば変わった性癖があるとか、乱暴だとか、かなりのMとか…」
麗美は即答した。
「乱暴です。いつも自分で持ち込んだ服を 私に着せてビリビリに破いたり、あと怖いんですがナイフで切り裂いたりしてます。でもナイフで私自身を脅すと言ったような事はありませんが、でも怖いじゃないですか?そんな怯える私を見て嬉しそうにはしてます。行為も乱暴ですが、無理矢理とか実際に殴られたりはした事はないです。乱暴と言うより荒々しいって感じです。お尻を叩いたりはされますが、でもあかぎれする程ではないし、実際お尻を叩かれて興奮する女の子は存在しますから、それが暴力に当たるかどうかは分かりませんが…。」
「そう…。一つ聞きたいの。その加藤竜彦と言う男は、レイプをしそう、しなそうで言ったらどっちかな?」
麗美は迷わず答えた。
「しそうだと思います。あの目はもしかしたら既にしてるのも…。説明つかないんですが、私が嫌がったり恥ずかしがったりしてる時のあの目はプレイとして楽しんでる目じゃないと思います。」
「そう。ありがとう。じゃあその加藤竜彦の特徴を教えてくれるかな?」
「はい。髪は若干染めていてソフトモヒカンっぽい髪型です。日焼けしてて顔は色黒です。アクセサリーの類はつけてるとこは見た事はないです。身長は180センチぐらいでしょうか。スラッとしてて背が高いです。体型は一見普通ですが、脱ぐと筋肉質で鍛えているのがすぐに分かります。あと…あの…、アソコは中々の…」
その言葉に若菜のペンが止まる。5秒ほど静止した若菜に麗美は戸惑ったが、その後は何事もなかったかのように手を動き出した。その5秒の間に若菜の頭の中に何本ものペニスが思い浮かんだかは若菜だけにしか分からない事であった。
麗美は知り得る事は全て話した。若菜が手帳を閉じた時、麗美は不安そうに聞いた。
「今回はどんな事件と関わりがあるのでしょうか…」
「すみません、色々ご協力頂きながら捜査に関してはお話できないんです。」
頭を下げる若菜に麗美は恐縮する。
「い、いえ、そんな…」
頭を上げた若菜はニコッと笑い言った。
「ま〜、お察しの通りの事件の捜査って事で!」
ウィンクした若菜に麗美はクスッと笑う。
「もし加藤竜彦なる男から電話があったらすぐに連絡下さいね?ここに。」
若菜は名刺を吉田に渡す。丁重に受け取る吉田。その名刺は重量以上に重く重く感じたのであった。