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わかちあい
【ロリ 官能小説】

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友人の死-1

若い女の客室乗務員たちが、カラフルな制服の上を脱いで次々と白いティーシャツ姿になっていく。辺りの「気」が一斉にその一角へ注がれた。
飛行機に乗るとき、客室乗務員も制服を脱いで荷物検査を受けることを知らない人は案外多い。たまたまそこに居合わせた小牧照英(こまき てるひで)も、やはりそれを知らなかった。しかし何より、周囲の雰囲気が突然がらりと変わったのに小牧は面食らったのだった。
視線がすっかり固定されてしまった何十人といる男性客たちは、さながら獲物を見つけた動物か昆虫であった。動けなくなっていると言おうか。動かされていると言うべきか。「自分」が無いのだった。感情の後から理性がとぼとぼ付いてきている人間の様を見るのがこれほど異様であろうとは、小牧のついぞ想像しないことだった。
小牧が周りの男性客とずれた反応だったのは、別段その人となりの高尚だったためではない。こちらは、二人前に並んでいる十二歳くらいの少女に先(せん)から見とれていたのであった。他の男性客と小牧との違いを強いて言うなら、前者が、疲れて性欲に意識の方向を任せてしまっているのに対し、後者は意図的に子供を眺めていた点だろう。これから開いていく子供の命の芽を、小牧は視覚に感じ尽くそうとしていた。

友人が急死したとの連絡を受け、小牧は急ぎ飛行機で北海道へ飛んだ。飛んだその日が通夜、翌日が告別式だったが、式の後、すぐ小牧は静岡へ戻らねばならなかった。
大学時代の友人と会ったのは久しぶりだったし、北海道に来る機会など、出不精の小牧にはまずないことなのだが、一人いなくなった友人を訪ねるのがその理由とあっては全く奇態な気分であった。
死んだ友人とは十年も会っていなかった。そしてこれから、もう会うことがなくなった。小牧の中では、かつての友人の姿が生き続けている。
実を言えば、この十年間、小牧が友人に会わなかったのは、会いたくなかったからでもあった。どれだけ歳月が人を変えているか、それを知るのが嫌だったのである。友人からも音沙汰のなかったことを考えると、向こうもやはり同じ思いだったのではなかったろうか。
客室乗務員がいなくなり、男性客たちは「人間」に戻った。緊張した性欲の集中が解けると、構内はまたどんよりとした疲れに満たされた。金曜日の空港はいつになく混み合っていた。
小牧の緊張は、少女がいる限りはそのままだった筈だが、機内へ乗り込めば席は離れており、ここで小牧にも重い疲労感がのしかかってきた。飛行機が飛ぶとすぐ、小牧は眠りに落ちた。


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