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耳にキス、キス、キス。
【女性向け 官能小説】

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-6

「新しいお店に行くのって、わくわくするよね」
「うん。わたし、そのわくわく感って大好き」
「僕も。気に入るものがあったらいいなぁ」
「楽しみだね」

 ヒロキくんといっしょなら、どこへ行くのもきっとわくわくして楽しいだろうなと思った。



「これ可愛いー」
「ほんとだ、似合いそう」

 わたしが手に取ったリネンの大判ストールを、ヒロキくんも覗き込んで頷く。
 レモンイエローとライトグレイのツートンカラーが爽やかでこれからの季節にぴったりだと思った。

「よかったらお鏡の前で合わせてみてくださいね」

 ショップスタッフの女の子が声を掛けてくれる。
 わたしはありがとうと言って、ストールを広げてみた。
 さらさらとした手触りが心地よい。

「エアコン対策にも良さそう。ね、ヒロキくん。──ヒロキくん?」

 返事がないことを訝しく思い、わたしは右隣にいるヒロキくんを見上げた。
 ヒロキくんの視線はわたしとは違う方向へ向けられており、そして驚いたような表情をしたまま硬直してしまっていた。
 二重の大きな目がさらに大きく見開かれている。

「ヒロキくん? どうしたの?」
「──えっ、あぁごめん。なぁに?」

 我に返ったヒロキくんは、誤魔化すように慌てて笑いながらわたしのほうへ視線を戻した。

「どうかしたの?」
「いや、ちょっとね……」

 明らかに狼狽の色が伺える。
 わたしはなんとなく引っかかるものを感じて首を傾げた。
 ヒロキくんがもう一度視線をわたしの向こうへ投げてから、わたしのほうへ身を寄せて言った。

「さっき声をかけてきた店員さん、いたじゃん? あのひとが知ってるひとに似ててびっくりしたんだ」
「そうなんだ。もしかしたら本人かも? 名札つけてるんじゃない?」
「うん……。いや、いいや。本人だとしても気まずいだけだし」
「そうなの? ヒロキくんがいいならいいけど。わたし、このストール買うね。色とか手触りとかすごく気に入った」

 わたしはそう言うと、ストールを手にレジのほうへ歩いて行った。
 ヒロキくんもあとについてくる。
 お金を払って売り場を出ようとした瞬間、さっきのあのスタッフの女の子がわたしたちを呼びとめた。

「やっぱり。ヒロだ。全然変わらないねぇ」
「あ……うん、久しぶり」

 目元すぐ下にたっぷりのチークがキュートな女の子。しっかりとカールした濃いめの睫毛とアイメイク。ピンクブラウンの髪が今の季節にぴったりで、軽やかでいいなと思った。
 ヒロキくんがぎこちなく微笑む。
 その反面、スタッフの女の子はヒロキくんの二の腕あたりに手を触れて、明るく楽しそうに話しかけていた。

「ほんと、久しぶり。今日、お店のヘルプでこっちに来てたんだけど、ヒロに会えるなんて超ラッキー。どうしてた? ヒロももう社会人よね?」
「うん、この春から働いてる」


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