第0章 FROM LADY GUN-5
若菜自身はみんなが自分に近寄り難いのは田口事件により殺人までも厭わない人間だと恐れられているからだと思っている。しかし事実は違う。前述の通り若菜は生きた伝説だ。刑事が必要な能力を全て以上に兼ね備えた刑事である。格の違いが敷居の高さを作っているのであった。話しかけるのも烏滸がましい…、そう思ってしまう程の存在なのであった。
(何で私と話すとみんなあんな余所余所しくなるのかなぁ…。やっぱ殺人者だからかなぁ…。)
そう恐れられていると思うと積極的に話しかける意欲が殺がれて行く。孤独感さえ感じる。若菜は課内を見渡して愛嬌の良さそうな中垣結衣を呼んだ。
「ねぇ、ナカガッキー〜!!」
全員が顔を上げそれぞれの顔を見合わせていた。そんな中でもしかして私の事??と思ったのはNFPメンバーでもある中垣結衣であった。
「ほら、早く来てよっ!!」
指を差す若菜に慌てる結衣。
「わ、私ですか…!?」
「ナカガッキーって言ったらあなたしかいないじゃないの。さ、早く!」
怒り出さない内にと小走りで若菜の元へ行く結衣。少し息を切らしながら直立する。
「わ、私…ナカガッキーなんですか…??」
「そうよ?何で??」
「何でって…ナカガッキーだなんて呼ばれた事ないから…」
変なあだ名が定着しては困る。しかし相手は生きた伝説・上原若菜だ。あまり不満は表に出せない結衣の歯切れは悪い。
「それにガッキーに似てるじゃない!まぁガッキーの中レベルってとこだけど。名前も 一字違いだしさ。」
微妙に馬鹿にされているような気がする。しかし耐える結衣。目をつけられたら警察にいられないかも知れない。早くこの名前もじりから脱出すべき話を終わらせる。
「で、何でしょうか??」
もっとその話をしたかったのにな的な雰囲気を出しながら答えた。