暴かれる真実-5
「そんなある日、ついに事件は起こってしまった。絵茉ちゃんが学校帰りに行方不明になってしまった。夕刻が近づいても帰ってこない。先輩がいてもたってもいられなくて警察に捜索願を出そうかと思った時に、絵茉ちゃんは何事もなかったように家に一人、帰って来た。しかも見たこともないぬいぐるみを抱えて。でも先輩と奥さんが何度絵茉ちゃんに問いかけても、どこで何をしていたのか本人も覚えていないらしく、気がついたら家の前にいたとしか言わなかったらしい。
先輩達はいよいよ本気で雨宮を恐れるようになった。もしかしたら雨宮本人が絵茉ちゃんにぬいぐるみを渡して、自分の元へ来るようにと気を惹かせようとしたのかもしれない。
それで彼とのやり取りを事細かに記録したみたいだ。もし自分にもしもの事があったらと書いてある。そして、ここまで俺が話した事を記録した次の日に事故が起こっている。雨宮が先輩に初めてコンタクトを取ってからわずか1ヶ月の間に事は全て進んだらしい。だから俺も先輩がこんな目に合っているなんて全く知らなかった。そろそろ定期的に連絡を取ろうと思っていた矢先に、自殺したと知らせが入ったんだ。」
「1ヶ月で・・・?」
「ああ。雨宮は何年も前から絵茉ちゃんを狙っていたのかもな。で、ここからは先輩の父・・・絵茉ちゃんの爺さんから聞いた事だ。先日突然俺の職場に訪ねて来たんだ。この封筒を持ってな。彼は末期ガンに侵されていいるらしくってな、車椅子でやって来た。自分の娘とな。絵茉ちゃんにとっては叔母に当たる。」
「――どうして突然やって来たんですか?絵茉の家族が亡くなってから随分経っている。」
「自分の命が短いとわかってから後悔して死にたくない。と思ったんだとよ・・・。先輩は雨宮に怯え出してからすぐに親父さんに相談したそうなんだ。絵茉ちゃんが狙われているってさ。だからこの町から離れて今すぐ自分の所に来いって、親父さんは言ったそうなんだ。先輩は雨宮との記録とボイスレコーダーを先に親父さんの元に送って、すぐに荷物をまとめて親父さんたちのいる町に出発した。その日に先輩たちは亡くなった。」
秀慈は息をするのを忘れるくらい、東条の話を聞き入った。