理由-10
ヒロキくんの男性器が蜜壷から出たり入ったりするたび腰が反り、離すまいと身体がヒロキくんを咥え込もうとする。
あぁ、ほんとうにわたしたちはぴったりだ。
こんなにもひとつになれる。
ヒロキくんが悩ましげな声を漏らした。
「沙保さん……愛してる」
「はあぁんっあぁんっわっわたしも──愛してる……ヒロキくん、愛してる」
「沙保さん──」
ヒロキくんが肌を密着させて舌を絡めた。彼の両手がわたしの乳首をこりこりと刺激する。
乳首を攻められ、後ろから突かれながらわたしは声をあげ続けた。
きっとこのドアの外にはわたしの声が漏れ聞こえている。
そう思うと、ヒロキくんと繋がっている部分の潤いが増した。
「あぁ沙保さん……可愛いよ……僕の沙保さん……」
熱っぽい瞳。泣きぼくろが愛おしい。
このひとを悲しませるようなことはしてはいけない。そう思ったはず。わたしはヒロキくんを悲しませるようなことはしてはいけないんだ。
もう、雅也のことは何があっても信じない。
ヒロキくんの腰の動きが速まる。
ふたりの息遣いが一層大きくなった。
身体の内側から何かがせり上がってくるような感覚。ヒロキくんがわたしの首筋に歯型をつけた。
「あぁんっあぁんっヒロキくん──わたし、わたし……」
「沙保さん、イキそう? イッていいよ、沙保さん……」
「はぁんっはあぁんっあぁんっああっあぁんっイキそうっイッちゃうっはあっはあぁんっイッちゃうっイクッイクッあぁぁんっ」
身体が硬直したように停止したあとガクンと力の抜けたわたしを支え、ヒロキくんがため息のような声とともに白濁した液体をわたしの背中に吐き出した。
ふたりの荒い吐息が部屋の中を満たしていく。
「──沙保さん……動ける? 一緒にシャワーを浴びよう」
「うん……」
「沙保さん、大好きだよ」
「わたしも……ヒロキくんが大好き」
キスをしながら、指を絡ませあって浴室へ向かった。
熱いシャワーを浴びて、お互いの身体を洗い合う。
湯気が満ちていくように、わたしの心も満ちていた。
翌日、わたしはヒロキくんが相当怒っていたのだということを知る。
「バイト、お疲れ様」
「ありがとう。沙保さんの手作りのごはんだ。わーい!」
テーブルにふたり分の食事を並べていく。
メインは照り照りになるまでじっくり煮た手羽先のしぐれ煮。
煮物料理は好きだ。
ぐつぐつ鳴る音を聞くと、きちんと料理をしているという実感があるからかもしれない。
キャメルのダッフルコートを脱いだヒロキくんは、ワインレッドのやわらかそうなセーターの中にブラックのギンガムチェックシャツを合わせて、そしてヴィヴィアンウエストウッドのブラウンのカシミアマフラーを手に持っていた。ヴィヴィアンウエストウッドのチャーミングなロゴマークがよく似合っている。
「いいにおい! おなかぺこぺこなんだー」
お茶碗もカップも来客用に用意していたものを使っているけれど、お箸だけは先日自分の新しいお箸を購入する際にヒロキくんが気に入ったと言っていっしょに買ったものを出している。
木目の雰囲気を残した、黒色の越前漆器のお箸。桜があしらわれていて、とても上品なところを気に入っているみたい。
「いただきます」