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耳にキス、キス、キス。
【女性向け 官能小説】

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螺旋-6

 あの柔和な表情からは想像ができない。
 きっとこの情報は、ただ単にお客さんとしてあのお店でCDを買うだけでは知ることができなかったはず。

 まるでテレビの中から抜け出してきたアイドルのようなルックス。
 決して髪色が派手だからという理由だけでなく、ひとの目をひく華やかさを持ち合わせている、彼。

 SNSの彼の個人ページに訪れるひとはとても多く、十代の女の子たちを中心に様々なひとが彼の気をひこうと色々な話題を投げかけている。

 彼が何か書けばすぐに反応があり、みんな彼のコメントに賛成する。
 否定なんてすれば女の子たちから非難の声があがりそうだ。

 そんな男の子とこうして会う約束をしてしまっているなんて。

「ライブ会場で落ち合う約束をすることはよくあるんだけど、カフェに行く約束は初めてだからわくわくする。何を着て行こうかなぁ」

 無邪気に笑うヒロキくんの顔が浮かんだ。
 何を着て行くか、なんて──わたしだって!
 あんな綺麗な男の子の前で恥ずかしい格好は絶対にできない。

 ださいって思われたらどうしよう。
 新しい洋服を買おうかな?
 わたしは、お気に入りのブランドのホームページを見ながらあれこれコーディネートを頭の中で描いた。
 ヒロキくんと並んで座っていてもおかしくない服装をしなくっちゃ。

 こんな気持ち、いつ以来だろう?
 高校一年のときに憧れていた先輩と初めて映画をみにいったときみたい。
 ドキドキして、そわそわして落ち着かない。

 ヒロキくんと、ドル紙幣の絵柄がプリントされたブラックのTシャツを着た赤い髪の男の子がドリンクのカップを持って並んで写っている写真を見つめながら、わたしもいつかこんなふうに彼と笑いながら写真を撮れる仲になれたらいいなぁと思った。

 それにしても、ほんとうに綺麗な顔立ちをした男の子だなあ。
 ぷっくりとした涙袋と泣きぼくろが、タレ目がちな二重の目にマッチしている。
 元々色素が薄いのか色白で、お肌もとってもきめ細かかったように記憶している。

 女の子みたいで可愛いって思ったっけ。
 男の子に可愛いっていうのは失礼かな?
 でも、きっとそう思うのはわたしだけじゃないはず。

 スマートフォンがSNSの通知を知らせる。
 返事がはやいとすごく嬉しくなる。
 今現在、彼もわたしと同じようにSNSを見ているんだと思うとドキドキした。

 ヒロキくんに見られていると意識するからか、SNSに書き込む内容に以前よりも一層注意を払うようになった。
 だらしない人間だとかガサツな女だとか思われたくなくて。

 ほんとうに、こんな気持ちになるのは久しぶりだった。
 まだ名前もつかない気持ち。

 何かが始まりそうな、そんな予感。




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