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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-90

「……なんか、誤解してない?」
 察しのいいひとみは、自分の言葉が指す意味を、勇太郎が取り違えていると瞬時に悟った。
「もう」
 ちょっと幸せ気分に水をさされ、ひとみは機嫌を損ねる。勇太郎は照れ笑いで、何とかそれをやり過ごそうとする。
そんな勇太郎の不器用さもまた、ひとみにとってはいとおしい。
再び二人の唇が重なり合う。さっきよりも、熱く、深く。お互いの呼吸を奪うように。そして、代わりの空気を与えるように。
唇だけの接合でも、こんなに熱くなれる。だけど、それだけじゃ我慢できない。
「勇太郎」
「ん?」
「私の部屋で、待ってて……」
 ひとみは、ふ、と軽く勇太郎の唇に触れた後、彼の腕からゆっくりと離れ、
「お風呂、入ってくるから」
 といって、居間を出て行った。その艶めいた瞳に、勇太郎は完全に魅せられ、この屋根の下には弥生もふたみもいるという状況を忘れて、これから訪れる甘美な時間に夢想の羽を大きく広げていた―――。




 待つ身というのは、こんなにも焦れるものか。
 ひとみの部屋で、その主を待つ勇太郎は、まるで童貞のまま初夜を迎える新郎よろしく、そわそわしていた。
(そういえば……)
 ひとみの部屋で繋がるのは、初めてのとき(※第1話参照)以来である。あの時の緊張と、高ぶりを思い出して、勇太郎の動悸が更に激しくなった。
(な、なんだよ。もう、何回もひとみを抱いたってのに……)
 なんで、今日は、こんなにドキドキするんだ?
苦しいまでに高鳴る心臓は、まるで全力疾走の後のように、その脈動をはっきりと勇太郎に伝えている。喉が、からからに渇いてくる。
 がちゃ、と部屋のドアが音を立てた。思わず勇太郎は背筋を伸ばしてしまう。
「ごめんね」
 入ってきたひとみは、髪を下ろし、バスタオル一枚を身体に巻きつけた格好だった。
「!」
 その姿に、勇太郎の血流は激しく逆巻いた。激しいと思っていた今までの動悸はまだまだ序の口だったようで、全身が心臓になってしまったかのように、痙攣にも似た激しい波が沸き起こる。
「ひ、ひとみ……」
勇太郎は、ぎくしゃくと立ち上がり、ぎぎぎと腕を伸ばし、ひとみの身体を抱きしめた。
その肢体からほのかに立ち上る石鹸の香りが、さらに勇太郎を昂ぶらせる。バスタオル越しに感じる、柔らかい各部分の感触が、やけに甘い。
「うふ、どうしたの? なんか、緊張してない?」
「き、き、緊チャウにゃんちぇ……」
 勇太郎は、強がって見せようとして、言葉を噛んでしまった。
「……すごい、してます」
 だから、強がりはやめた。
「なんでだろう? さっきから、心臓がバクバクして……とまらないんだ」
「ほんとだね……苦しくない?」
 ひとみは、手のひらをそっと勇太郎の胸に添える。そこから伝わる熱い鼓動は、明らかに平常のものではなかった。
「すっげ、苦しい……」
 勇太郎の本音だ。息も苦しいので、ふかく呼吸したいのだが、半裸の彼女を前にそんなことをしてしまったら、変質者のようでとても不快だ。
「勇太郎……」
 ひとみは勇太郎の腕から離れ、電気を落とした。そして、窓から入る月明かりに身を晒し、その身を包んでいたバスタオルを、足元へ滑らせる。
「………」
 見慣れたはずの、ひとみの一糸纏わぬその姿。早くも火照りを見せる肌に浮かんだ光の粒が、差し込む光を浴びた途端に神々しさをたたえる。
勇太郎には眩いばかりだ。それでも魅入られたかのように、ひとみの裸を凝視する。


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