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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-89

 夕食は和やかなものだった。ひとみの作る食卓は、非常に和風である。秋刀魚の塩焼き、肉じゃが、御飯に味噌汁……。それはとても、温かい。
 食欲を充分に満たし、心も満たされて、勇太郎は幸福だった。そのせいか、夕食が終わった後もなんとなく帰りがたく、勇太郎は居間でくつろいだ時間を過ごした。洗い物を済ませたひとみも、今はその隣に腰掛けている。
「お風呂、空いたよー」
 居間のドア越しに、ふたみは声をかけた。そしてそのまま二階へとあがっていく。時間を見ると、10時を指そうとしていた。寝るには早いが、もう一日の終わりという時間でもある。
「あ、そろそろ……」
 帰るよ、といいかけた勇太郎はひとみの寂しそうな顔に言葉を飲み込んでしまった。
「ど、どしたの?」
「……別に、何でも」
 とてもそういう表情ではない。これは明らかに、触れ合いを求めている。
そういえば、この家で夕飯の御相伴に預かるのは随分久しぶりだ。それに、最近ひとみと身体を重ねたのは、5日前のこと。学校が始まっているから、さすがに毎晩というわけには行かなくなり、かなり間が空いてしまった。
 楽しい食卓、そして二人でいる時間。それら全ての要素が、ひとみの心の中に寂しさも植えてしまったのだろう。
(明日も学校あるけど……)
 勇太郎の演算装置は既に回答を出している。と、いうより、ひとみの顔を見た瞬間に、その計算回路は彼女の虜になっていて、彼女に有利な回答しか生み出せなくなっていた。
「あ」
 そ、とひとみの肩に手を廻し、身体を寄せる。そして、吸い込まれるように、その唇を重ね合わせた。
「ん…………」
 待っていたかのように、ひとみは素直に肩の力を抜く。勇太郎の腕に、全てを預ける。
 唇が重なり合うだけのキスは、それでも、二人の鼓動を熱く高めていった。
つけたままのテレビから流れる、バラエティ番組の笑い声も、確実に刻んでいる時計の音も、今は二人の耳に入らない。感じているのは、溢れてしまいそうなほどに流れてくるお互いの気持ちだけ。
ひとみだけでなく勇太郎も、久々の団欒にあてられ、更なる暖かさを求めていたのだ。
「……んむ………ん………」
 長い。とても長い。
その長い間、二人は唇だけで繋がっていた。このまま、暖かさと柔らかさを手放すのが惜しい、と、お互いに感じていたのだろう。
 時計の針が、10時を指した頃、ようやく二人は口の結合を解き放った。ひとみは、そのまま、身体を勇太郎の胸に預ける。
愛しい人の柔らかさと重みを受け止めて、勇太郎の中に、穏やかな情愛が宿った。
「ン………気持ちいい………」
 優しく、ひとみの髪をなでる。子猫のように、勇太郎の腕の中で丸くなるひとみは、喉を鳴らすように吐息を漏らした。
 直接、身体を触れ合う激しい行為よりも、今は、こうしてひとみの温かさに触れていたいと勇太郎は思った。肉体から得られる快楽も、若い身にとっては非常に甘露であるが、こうやって穏やかに、温かさを分け合う行為もまた、心を満たされてくるようで気持ちが良い。
 それはひとみも同じこと。まるで、父親に甘えているような気分になる。いま、勇太郎から与えられているのは、渇望していた父性であり、それは、実際の父親からは決して得られなかったものだ。
「勇太郎は……おっきいね……」
「?」
 自分では、標準だと思っていたが……。と、勇太郎は的外れなことを考えている。


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