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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-146

「あ、あぁぁぁ――――っ! うあうぅぅぅ―――っっ!」
「あらあらあら。弥生ちゃん、息を整えてぇ」
「ぐ、ふうぅぅぅ―――――……ふううぅぅぅ――――……」
「そうそうそう、その調子で、陣痛をながすのよぉ」
 額に汗を浮かべ、苦痛に顔をゆがめている弥生の耳元で、いつもと変わらぬ調子で語りかける花江。その身は、よく見る清潔な服装をしている。
 弥生は今までの穏やかさが、まるで嘘のような苦痛の荒波を、それでもなんとかやり過ごす。しかし、断続的に強烈な苦痛が、またしても彼女に襲いかかってきた。
「う、ぐああぁぁああぁ!!!」
「まあまあまあ。弥生ちゃん、しっかりぃ」
「ぐうぅあ! っっ――――……ふ、ふうぅぅ―――――……あぅ、ぐうぅぅぅぅ!!」
 なんとか、呼吸法でやり過ごそうとするが、想像を絶するまでの苦しみに、さしもの弥生も完全に余裕を失っていた。
「……お父さんを、呼ぶ?」
 耳元で、再び花江は訊いてくる。“父”の言葉に反応した弥生は、がくがくと頭を何度も縦に動かして、肯定の意を表した。
 すぐに、根室夫妻と同じ出で立ちに身を包んだ郷市が、弥生のところへやってきた。
「弥生、辛いか? 弥生……」
 その手を握り締めて、苦渋の汗を振り絞っている娘に語りかける。
「ふうぅぅ――――……ふうぅぅ――――……」
 父の温もりに触れたことで安心したのか、そのうち、弥生の呼吸に落ち着きが出てきた。
「っ」
 ぷつり、と何かがはじける音が弥生の中で起こる。瞬間、身体の中から溢れ出るように股の間を温かい水流が迸った。
「破水したぞ」
 根室の呟き。
「あらあらあら。弥生ちゃん、もうすぐよぉ」
「は、はいぃぃ―――――……っ!」
 郷市を握る手に、更なる力がこもる。
「はぁ、はぁ……あ、んん――――――……っっ!」
 花江の指示に従い、弥生はいきむ。陣痛の波に乗るように、呼吸を整えて、そして、いきむ。まるで、身体の中に息づく生命が母体に命令をしているかのように、奥底から溢れてくるその衝動をとどめることができない。
 陣痛が起こると、深呼吸して息を吸い込み呼吸を止める。花江の教えてくれた要領に従い、何度もそれを繰り返した。
「――――――……っっ、――――――――……っっ」
「きたきたきた、きたわよぉ」
 花江が股の間に顔を寄せながら言う。
母体のわななきに従うように、なにか、丸いものが顔を出しては、中に引っ込んでいく。弥生の中で成長していた生命が産道を通り、ついに外気に触れようとしているのだ。
「――――――……っ ――――――……っ」
「そうそうそう、そうよぉ。落ち着いて、落ち着いて……」
 固いものが、股の間に挟まっている。それは、間違いなく自分の中から生まれでようとしている生命だ。
「はぁ――――……、はぁ―――――……」
教えられたとおり、いきみたいのを我慢して、身体中の苦しみに耐える。
「まあまあまあ、でてきたわぁ」
 花江が、とにかく力を抜くように語り掛けてくる。
赤子の頭部が常時、母体の膣口と会陰を広げている状態の今、それを収縮させてしまうことは、柔らかい生まれかけの生命に負担を与えることになるからだ。
「はぁ――――……、はぁ―――――……」
「………」
 根室が、状態を寸断なく見守る。もうすぐだ、もうすぐ赤子と母親がこの世に同時に誕生する。


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