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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-147

「はぁ――――……、はぁ―――――……」
「でたでたでた、でたわよぉ」
 花江の嬉しそうな声。
膣口と会陰を大きく広げていた頭部が、ずる、と根室の構えていた白布に降りてくる。そのまま、まるで何かに導かれるように、全身が弥生の中から産まれ出てきた。
「―――――――っ」
 柔らかく、暖かいものが降りていく感覚。それは、弥生の身体が一番よくわかっていた。
「あ、ああぁ………」
 耳に聞こえてくる、元気のよい泣き声。根室が抱えた白い布にくるまれている新しい生命が起こす旋律だ。そして、その生命は、自分の中で育ち、自分の中から産まれ出たもの。
「元気のいい、女の子だ」
 弥生の前に差し出された赤子。皺くちゃな顔をさらに皺だらけにして、命の讃歌を高らかに奏でている。
「あぁ――――……」
 腕に、そっと抱いた。胸の奥から、表現のできない穏やかで、暖かいものが溢れてくる。
 自分の赤ちゃん……母親……子供……生命。
 ありとあらゆる尊いものが、全てこの腕の中にある気がする。
「まあまあまあ、おめでとう」
「花江さん……」
「ようがんばった。おめでとう」
「根室先生……」
 ふと、横を見る。
「やよいぃぃ……よかったなぁ……よかったなぁ……う、ぐす……」
「おとうさん……」
 涙腺を抑えている止め具を失ったかのように、郷市が号泣していた。
 弥生は、もう一度、腕の中で泣き続ける我が子の顔を見る。
(こんにちは、赤ちゃん……)
 何処かで耳にしたフレーズ。だが、とても素敵な言葉だと弥生は思う。
「わたしが、お母さんよ……」
 “母”と自ら口にしたそのとき、心のそこから湧き上がる母性に満たされ、弥生は幸福に溢れる微笑みを浮かべた。
聖母のごとき優しさと神々しさ。あらゆる苦痛を全て受け入れて、その中から産まれた生命を胸に抱く弥生の姿は、これ以上ないほど神聖なる存在であった。





 その後、産後の経過もよく、弥生はすぐに退院できる体調を取り戻した。
花江や根室は、まだ当分の滞在を勧めてくれたが、二人は“またにてぃ道場”を後にした。郷市が来るまで、雑務を担当していた八坂も復帰していたし、これ以上の好意に甘えることも、その八坂の居場所を奪うことも、二人の本意ではなかった。
 女の子には、安美と名づけた。二人で考えた名前だ。
 父親がいない分の父性は、郷市が受け持った。彼はこの孫娘を可愛がることしきりで、弥生が困ってやきもちを焼いてしまうほど、安美にべったりであった。
 幸せな時間が、そこにはあった。裕福とはいえないけれども、心の余裕は、情緒の豊かさを生みだす。そんな空間で、安美は大きく成長していった。
 そんな幸せに翳りが見えたのは、郷市が病に倒れてからだ。風邪をこじらせただけかと思っていた病状は意外に重く、弥生の篤い看病も虚しく、ついに不帰の人となってしまったのだ。最愛の父を亡くした弥生は、本当に悲しくて、毎夜泣き暮らした。
 亡くなる寸前、郷市は、ひとつの書類を弥生に手渡した。それは、安堂家の土地の権利書である。郷市によると、あの家を含む土地の権利はまだ生きているらしく、生活に困ることがあったら、これをうまく活用するように言い残した。なぜ郷市が、安堂家に返還したはずのこの権利書を所有していたのかは訊かなかった。
 弥生は、この父の形見ともいえる書類を、大切に保管した。そして、安堂家を出て以来、父と暮らし続けた借家での生活を続けた。
 時は流れてゆく。
美しく成長した安美に、結婚話が持ち上がった。交際していたとある実業家の青年から、結婚を申し込まれたのだという。弥生のところへ挨拶に来たその青年は、誠実さにあふれ、真面目そうな男性であった。弥生は喜び、一も二もなく二人の結婚を許した。


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