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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-136

「ご……ごめんなさい……あっ」
「いいんだよ、百合子」
 ぎゅ、と彼女を抱きしめて、悲しみを癒してあげる。
しゅくしゅくと静かな嗚咽を漏らしていた百合子はやがて、赤い瞳ではあったがいつもと変わらぬ優しい微笑を見せてくれた。
「何か……欲しいものはあるかい?」
「え?」
「百合子が欲しいもの、なんでもあげるよ……」
「そ、そんな……ん……」
 別の事を言おうとする妻の唇を塞ぎ、答えを求める。百合子は少し困った表情を見せたが、やがて何かを思いついたように、口を開いた。
「あの……なんでもいいですか?」
「ああ」
「それじゃ、ひとつだけ……」
「ひとつだけでいいのか?」
「ええ……ひとつだけ……でも、とっても欲しいものがあるんです……」
 伏目がちに頬を染め、言いよどむ百合子。そんな妻の仕草が愛らしくて、もう一度、くちづけを送る。
「……いいよ、言ってごらん」
「あ、あの……」
「うん」
「……赤ちゃん、です」
「?」
 出張先が青森だったから、木彫りの小熊を想像してしまった。あれの、赤ん坊のヤツはあっただろうか?
「わたしと……あなたの……赤ちゃん……」
「う、うむっ」
 全てを悟り、さしもの郷吉も顔が熱くなった。百合子は言ってから、もっと顔を紅くしている。性に熟れ始めたとは思えない、初々しい若夫婦である。
「あの……ダメですか?」
 消え入りそうなか細い声。そんな声でお願いをされてしまったら、もう、郷吉には選択権などありようもないのだ。
「いいよ……うん。赤ちゃんか……いいよ、百合子」
「嬉しいです……」
 すがりつくように、腕を身体に廻してくる百合子。そんな妻の身体を優しく抱きしめて、彼女が欲するものを与えるため、郷吉はその柔らかい身体に覆い被さった。



「あっ、あ、ああぁ………」
 ゆっくりと、妻の中へ身を沈めてゆく。生命を生み出すその入り口は、熱さをたたえながら固く屹立したもうひとつの源を迎え入れた。
敏感で繊細なお互いの粘膜に傷がつかないように、生命の通り道は、熱く湿り潤んでいる。
「あ、ああ……あなた……入ってる……ん…ん……は、入ってるの……」
 はぁ、はぁ、と息を荒げながら、腰から湧き上がってくる幸福に身悶える百合子。
「あんん……んふっ……あ、あ、んんっ……」
深くまで暖かさが満ち溢れる。それは、痺れるような愉悦も孕んで、百合子の身体中に流れだした。
「わ、わたし……」
愛する人の大事な種をもらう神聖な行為に、こんなによがってしまう自分は、許されていいのだろうか? それは、真面目な彼女らしい思考だと思う。
「百合子……暖かいな……すごく……」
 郷吉は、一部とはいえ母なる胎内へ還ることができて、心を満たされた。
早くに母親を亡くしていたから、歳を重ねても母性の渇望はやむことがない。いま、百合子の中に、彼女の全てに、郷吉は“母”を想い求めていた。
「あなた……あなた……」
 そして、百合子もまた郷吉を求めていた。
―――彼が、その大きな手のひらで、私の頬を撫でている。
―――彼が、その暖かな唇で、私の吐息を吸い込んでいる。
―――彼が、その熱い愛情で、私の胎内を満たしてくれる。
 全てが……郷吉の全てが、愛しかった。
「愛しています……愛してるの……」
 愛しさは、言葉となってほとばしる。想いを集めて、吐息にのせて、彼の胸へと止め処なく。
「百合子……愛している」
 郷吉は、その想いを受け止め、自分の想いも重ねて、唇から返してあげた。


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