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『Twins&Lovers』
【学園物 官能小説】

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『Twins&Lovers』-134

「あなた……はぁ……すぅ……ん……はぁ……」
 それは、郷吉のシャツだった。
「はぁ……あ、あんっ……う……んうぅ……」
 百合子が、夫である自分のシャツを口元にあてて自慰を……。およそ、貞淑な普段の彼女からは想像もつかない痴態がそこにある。
「はぁ……あ、あふ……ん、んく……」
 郷吉は、胸が昂ぶった。そのまま、食い入るように隙間にかぶりついた。
「あっ……ああっ……あなた……あなた……すぅ……すぅ……」
 きっとその指先に、郷吉を思っているのだろう。股間を忙しなく上下する細い腕が、なんとも艶かしい。そして、額に浮かぶ汗と快楽に歪む眉が……いとおしい。
「あなた……あなた……あっああっ……あなたぁ……」
 ひょっとしたら彼女は、ずっとこうやって自分を慰めてきたのかもしれない。触れてこない夫に無理強いをせず、しかし性の昂ぶりを感じたときは、こうやって身を静め、自分の前ではあくまで貞淑であろうと努めていたのかもしれない。
「あなた……あ、あんんっ……せつないんです……とっても、せつないの………」
 それを3年間も続けさせていたとしたら、自分はとてつもなく残酷な仕打ちをしてきたことになる。
「………」
 郷吉は、衾を開け放った。
「!?」
 驚愕の視線が、自分を撃つ。そして、その表情は見る間に凍りついていった。
「あ、あなた……どうして!?」
はだけた胸も、裾もそのままに、時を止めている百合子。
 こんなに狼狽する彼女は、見たことがない。
「百合子……」
「あ、あぁ……ご、ごめんなさい…わたし…わたし……」
 青い顔のまま、ようやく胸と太股の衣を正そうとする。
「!」
 しかし、その動きを郷吉が止めた。その胸に、彼女を抱きしめたのだ。
「あ、あなた……」
「すまなかった……百合子、すまなかった!」
 強く……強く彼女を胸に抱く。髪から香るその温もりは、こんなにもいとおしく、暖かいものだったのかと、初めて気がついた。
「すまなかった」
「あなた……」
 ようやく落ち着いたのか、静かな息づかいを取り戻し、自分を腕の中へ熱く包み込んでくれる夫の背中に腕を廻す。初めて……初めてこの人の温もりを間近に感じることができたと思う。
「すまなかったな……百合子」
「どうして……あやまるのですか?」
「どうしてって? ……お前を、こんなに苦しめて……俺は……男として、最低だ……」
「そんなこと、仰らないで……」
 百合子が、顔を起こした。期せずして、二人の顔が間近で向き合う。
「泣いて……いるのですか?」
 百合子はもう、自分の痴態を最愛の夫に見られていたことなど、頭の隅から消していた。
静寂で清涼なものが胸の奥から溢れてきて、羞恥は、川面に浮かんだ笹舟のように何処かへ押し流されていた。
「泣かないでください……そんな顔をされると、わたしまで悲しいです……」
「百合子……」
 郷吉は、頬を撫でてくれる細い指先を掴んだ。そのまましばし、穏やかな視線を交錯させていたが、やがてどちらからということもなく、その顔を寄せ合う。
「………」
「………」
 まずは唇で、触れあいのなかった3年という時の隙間を埋めあった。


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