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バリ島奇譚
【SM 官能小説】

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バリ島奇譚-8

ユリエは不思議だと思うことがある。男恋しさに愛おしいのはペニスの堅さや柔らかさではなく、
蕩けるような男性器の体温でもある。ユリエは舌先でクトゥの陰嚢を舐めまわし、睾丸を唇で
啄むようにしゃぶる。唾液が次々と口の中に溢れ、皮膜に包まれた睾丸が舌の上をぬるぬると
滑っていく。

…アアッ…アッ…アウウッ…

クトゥが悩ましい喘ぎ声をあげる。感じている…彼はここを愛撫されることだけでも感じるのだ。
ユリエはふたたび漲り過ぎた肉棒の先端に舌を這わせる。クトゥの鈴口はすでに夥しい透明の液
で充たされている。咥えた幹の肉縁を唇で締めつけると、眉間を寄せたクトゥはすがりつくよう
な恍惚とした表情を見せる。

…イイ…トテモ、トテモ イイデス…

彼はユリエの唇と舌の蠢きに悩ましい喘ぎ声を滴らせる。さらにユリエは肉根の裏側の迫りあが
った縫い目に沿って舌を烈しく絡ませ、ペニスの先端が咽喉の奥をつつくほど深く呑み込む。
ユリエの頬が強ばり鼻息が荒くなる。どこから出るのかわからないくらいあとからあとから唾液
が流れ出る。全身がひきつるほどの快感でユリエの体の奥がまどろむように充たされていく。
からだの中に溢れる蜜汁は、徐々にその濃さを増していき、彼女は頭を上下に揺らし、烈しく
包皮を唇でしごいていく。


あのときユリエは、鞭の先端に感じるカワシマの麗しい肌とペニスに欲情した。嗜虐の妄執に堕
ちていくユリエと蹂躙される悦びに舞い上がっていくカワシマは、しだいに性の狂気と倒錯に囚
われながらも、どこまでもひとつの心に同化していったような気がする。

酷薄な灯り中で喘ぐカワシマのペニスの息づかいほど、彼に対する心地よい情念を感じるものは
なかった。彼が尽き果てる終焉のすべてを彼女が支配する狂悦の戯れ。彼が望んだ苛酷な肉欲の
柩。そして、こぼれ落ちる精液は聖杯から滴る芳醇な果実酒そのものだった。

カワシマが恋人をどれだけ愛していようが、ユリエはそんな愛など欲しいとは思わなかった。
朽ち果てる南国の黄昏のようなユリエの欲情が欲しがっていたのは、媚び、喘ぎ、過酷さに裂か
れるカワシマの姿だった。ユリエの鞭を求める彼のからだがのけ反り、棘の蔓で緊めあげた苦し
げなペニスが、灼熱の狂乱にとりつかれ、烈しい勃起を繰り返すとき、ユリエはカワシマのペニ
スが死に絶えるのをふと見たいと思ったのが不思議だった。


…私はあなたが交わったどんな女よりもあなたを知っているわ。そうよ、あなたの倒錯した心と
肉体がいったい何を求めているのか私は知り尽くしているのよ。あなたの恋人があなたのペニス
を咥え、性の奥底にどんな欲情を抱いたとしても、私は彼女の軽薄さを侮蔑するわ。あなたにと
っては、そのペニスは憐れなただの虚像でしかないのよ。そして、あなたの中に秘められた性の
深淵がどこにあるのか。道化芝居のようなペニスの囀りに腰をふるわせる彼女の愚かさのすべて
を私は知っているわ。

…棘の蔓で縛られた憐れなペニス。痛ければ萎えさせればいいのよ。それなのにあなたは、私の
眼の前で虐められる快感を欲しがるように勃起を続ける。皮肉だわ。そろそろイキそうね。
でも、あなたは射精なんてできないのよ。もちろん私がゆるすまで。そうなのよ。あなた自身が、
わたしが赦さない射精なんて拒否しているのよ。もし勝手に射精なんてしたときは、わかってい
るでしょう。わたしは、あなたのペニスをこの果物ナイフで切り裂いてしまうかもしれない…




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