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まことの筥
【二次創作 官能小説】

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まことの筥-17

「……御衣が汚れましょう」
 屹立する肉竿を揺らして岩瀬が近づいてきたかと思うと、手水鉢を跨ごうとしている侍従の体から単衣を毟り取った。
「はあっ……」
 一糸纏わぬ白肌を晒した侍従は逡巡している間に腹を冷やされて、押し寄せてくる濁流を逃す先は他にはなく、内ももを震わせて腰を下ろしていく。
「何をなさる気ですか、侍従さま?」
 若い女房に囃されていっとき膝が止まったが、虚ろな視界に手水鉢を見下ろした。背から垂れた髪が体に沿って足の間に垂れ落ちている。侍従は急いで首の後ろから巻き取ると、髪を胸乳の中にぎゅっと抱えた。
「もたもたしないで。はやく」
 正面から姫君が苛々した声で言う。その言葉に呻きを漏らした侍従が天を仰いでしゃがんだ。
「あっ……」
 膝を折ると尻が水面に浸かった。あまりの冷たさに膝を伸ばしたが、刹那触れただけなのに、そのせいで崩落が始まった。水に浸かるわけにはいかず、しかし少しでも身を近づけたいから、中腰に膝を折った最も情けない姿で、足の間から黄金色の奔流が音を立てて水面を叩いた。
「なんといういばりをされるのでしょう。まぁ、大きな音」
 年嵩の女房が嘲ったが、一度漏れ出しては止めることができなかった。そして背後からは湿った風音が鳴り、水面が濁され始める。
「あぁ……」
 苦悶から解放された安堵の中、侍従は身の中に溜まっていた泥濘を全て手水鉢に垂れ落としていった。叩かれた水面の飛沫がくるぶしへ跳ねる。情けない水音を立てているのに、熱く潤う蜜壺から温めていた岩瀬の白濁を足の内側に垂らしてしまう。
「きったない。……くさい」
 この世の女で最も美しいと思っていた侍従は、最も穢らしく淫りがわしい者に成り下がっていた。しかしその姿に、姫君は出処の知れぬ疼きを体の芯に感じていた。
 たまらぬ、と唐崎が泡唾を吐きながら、塗籠の戸を開けて篭っていた臭気を逃した。



「こんなことは初めてだ。なんと恥ずかしく、情けない思いをしたことだろう。最早あの人が憎くて仕方がない」
 平中は簀子に身を凭せて消沈していた。女童姿の姫君は神妙な面持ちを作り、
「まさか侍従様がそんな無体な仕打ちをされるとは思ってもみませんでした。少尉様のお役に立てたと嬉しく思っておりましたのに」
 そう慰めると、平中は哀しげな笑みを浮かべて姫君の頭を撫でた。
「そなたのせいではない。……これまで迷惑をかけたね。私はもう、あのお方を諦めることにするよ」
「まぁ……」
 逢瀬の途中で糞を漏らし行った。その事実を知らされたわけでもないのに、幻滅して諦めるなんてつまらないと思った。男が女を恋焦がれるのは、所詮はその程度の思いでしかないのかと夢を壊されたような気がして、
「諦めるられるのでしょうか?」
 と問うた。するとやはり平中は苦しそうな表情を浮かべ、
「……そう簡単にはいかないよ。あれほど愛した人だからね。しかし……、何とか諦めなければ、このままだと狂ってしまいそうだ」
 最後は己に言い聞かせるように言った。言った後も平中の目は中有を彷徨って、闇の中に抱いた侍従の体を懐かしんでいるようだった。「……せめて、あのお方が、今まで逢うてきた世間並みの女たちと同じであろうと知らしめられたら良いのに」
 呟く平中に、姫君ははっと頭に浮かんだ事を耳打ちした。扇に顔を隠した平中が苦笑をしたが、上端から覗くその目はまんざらでもない。
「そのような馬鹿らしいこと……」
「いいえ、少尉様。侍従様も人であること、これほど思い知る術はありますまい?」


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