まことの筥-13
「侍従様、……大層乱れておられますなぁ。俺みたいな奴と目合わって、まぁ、なんと淫らな」
岩瀬に揶揄をされて眉を寄せ悔しがる侍従だったが、奥々まで押し込まれると更に岩瀬の体躯に爪を立てた。気が極まって来た岩瀬は侍従を床に這わせ、衣を捲りあげて尻を丸出しにすると、たおやかな腰を両手で掴み、大きな体をぶつけるように後ろから貫いていく。塗籠の中には岩瀬の腹と侍従の臀が鳴る音と、貫かれる度に背を弓反りにして放たれる侍従の高い涕き声が響いた。岩瀬が咆哮して一段奥まで突き込み、尻窪を縮めて濁汁を侍従の体へと注ぎ入れると、侍従は悲哀とも歓喜ともつかぬ呻き声で項垂れて、しかし、しっかりと肘をついて尻を向けてこれを受け入れていた。
岩瀬が男茎を抜き取ると、燈台に茫と照らされた尻の狭間で粘液に萎れた縮毛から白濁が板床に垂れ落ちていく。
「おお、……侍従様」
だがこの日は、岩瀬が息を切らして今しがた自分が姦した美しい女房の秘峡を眺め、「なんとも淫らな……。あなたさまのような美しい方でも、我らと同じ穢い穴があるのですなぁ」
と、無残に散らされた花唇の上で、まだ蕾として蠢いている皺花を指差した。
それを見た姫君は、「確かに」と思った。男と女の営みや、自分も持つという女人の神器についてはよく分からない。むしろその近くに穿たれている、穢物を体から捨てる穿孔のほうが身を以て知っていて馴染が深い。穢らしい排泄が行われる捨口が、人並み外れて美しい侍従にも付いているのは不思議だった。
「ああ……」
塗籠の皆の注目を集める眼差しを感じたのだろう。羞恥の呻きを漏らし、片手を背に巡らせて侍従が隠すと、せっかく見ていたのに、と姫君が不興を覚えた。
「……本当、あなたのような人でも、穢い穴があるのね。……ねぇ、ということは、あなたも私たちと同じように、そこから汚い物を吐き出すの?」
「うっ……」
「……見てみたい」
姫君が呟くと、侍従が床に額を付いたまま髪を揺すってかぶりを振り、二人の女房は唐崎が窘めるのも聞かず、はしゃぎながら「私たちも」と便乗した。這い蹲る上から囃し立てられてずっと首を振っていた侍従だったが、
「……できまするぞ」
と岩瀬の声に身を止め、青ざめて彼を見やった。姫君も女房たちも皆、岩瀬の方を向く。暫しお待ちあれ、と言って岩瀬が塗籠を出ていくと、程なくして小ぶりの甕を携え、口には葦枝を咥えて戻ってきた。何を始めるのか不思議に思っていた姫君と女房たち、そして侍従だったが、岩瀬がいそいそと侍従の傍に膝まづくと、
「さて、侍従様。尻をこちらへ」
と、葦を咥えたままくぐもった声で言うものだから、侍従は恐れ慄く瞳で小刻みに首を揺すった。岩瀬が二人の女房を一瞥する。何を為そうとしているのかはとんと分からない女房たちだったが、何やら愉しい事が始まりそうな予感がして、岩瀬がまだ白濁の垂れこぼれる尻へ顔を近づけていくと、悲鳴を上げて逃げ惑う侍従を二人がかりで取り押さえた。ちょうど初めて侍従が慰み物にされた時と同じく、尻を高々と上げた姿にする。
「これ、何をする気だ」
岩瀬が甕に口をつけて汁を含み、葦を咥え直して侍従へ顔を近づけていくと、まず唐崎が委細に気づいたのか口を出した。蘆の先が侍従の菊花へ触れ、僅かに突き刺されると、二人の女房が目を見開く。
「やめぬか!」
尻穴は秘技伝授にはまるで関係が無い。何の功ももたらさぬ痴戯を止めようとした唐崎を、
「待って。続けさせて」
と、侍従の皺口に葦が突き刺された時から心躍らせていた姫君が制した。唐崎は何か言いたげに口を開閉させたが、やがて諦めたような鼻息とともに閉じた。
「うああぁっ……!!」