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悪徳の性へ 
【学園物 官能小説】

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〜 額縁 〜-3

 ……。


 ガラスケースは防音仕様でもあり、B30番の股間から滴る水滴が止まったことで、B33番が放尿を終えたことが分かった。 後はこのまま3時間ほど放置して、適当なところで解放すればいいだろう。 自分の席に戻って進行を継続し、寮長の挨拶を頂いて――

 ……? 寮長の視線が気のせいか冷たい。

「あの、失礼します。 B30番への指導ですが、何か不都合がありますでしょうか」

「とんでもない。 お任せした以上口出しはしませんわ。 それくらいでいいんじゃなくて? 甘すぎる気は致しますけど」

 これだ。 『口出ししない』といった傍から、小言を挟む。 笑顔の裏に流れる血は何色だろう。

「も、申し訳ありません。 それでは、その、自分は進行に戻らせていただいても……?」

「あら、副寮長の貴方は何もなさらないの?」

「っ!」

 そういうことか……。 怪訝そうな寮長の眼差しで、寮長の意図がやっとわかった。 新入生が1人欠けた咎は、直属の先輩だけではなく、会を仕切るワタシも担うべき。 つまり、ワタシ自身も指導の対象にしろ、ということだ。

「もう一度いいましょうか?」

「……いえ。 度重なる不手際をお詫びします。 初日の会を万端整えることができず、大変申し訳なく思います。 私もB30番同様、額縁に入らせていただきます」

「いいお返事ね。 どうせならタイトルも御自分でお決めになったらいいわ」

「はい。 ありがとうございます」

 どうしようもない。 こうなっては俎板の上の鯉になるしかない。 

「……」

 すぅー。 

 深呼吸を一つ。 覚悟は決まった。 ここで中途半端なタイトルの『額縁』になっては、新入生に対しては無論のこと、Bグループ生に対しても示しがつかない。 何より寮長からは笑みが消えている。 他の全員が納得したとしても、寮長が首を縦にふってくれないと意味がないわけで、ワタシが考えうる最悪の『額縁』になろうと思う。 正直にいって、これだけは絶対に嫌で、考えただけで吐気がするが『適切な指導ができない副寮長』の汚名よりはマシだ。

 ワタシはホワイトボードマーカーを手に取った。 指先が震えるのは如何ともしがたい。 ゆっくりとマーカーを滑らせる――タイトルは『おいしそうな御飯』。 御飯と書くとごく普通に見えるが、寮では全く違う意味をもっていた。 御飯――GOHAN即ちG飯――とは、お米にゴキブリの卵鞘を混ぜたご飯をいう。 ゴキブリの卵鞘は、一見すると小豆に酷似しており、赤飯に混ぜると見分けがつかない。 実際には触覚に似た管がついていて、楕円形というよりはガマグチ型だったりと形状は大分違うのだが、何分色が小豆とそっくりなのだ。 つまり『おいしそうな御飯』とは、『額縁』の中で『ご飯(G飯)』を頬張るという構図をさす。 

 虫が絡む『額縁』は、昆虫が苦手なものにとっては禍々しすぎる図柄といえるだろう。 例えば『コオロギを頬張る少女』だとか『笑顔でゴキブリと戯れる牝犬』だとか、『鼻から青虫を吸い込んじゃった』に至るまでパターンは枚挙に暇がない。 そんな中でも『G』を交えた絵柄は特にハードルが高いとされ、その中でも、実際に大盛りの『御飯』を食べるには一際強い覚悟が必要とされていた。 

 食べて見せよう。 食堂から届けられるであろう『御飯』を、美味しそうに『額縁』の中で頬張ってみせよう。 副寮長として、このケジメはたっぷり33番からとるとして、ここはワタシが身体を張る場面だ。 



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